溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
案内された席に着き、ミルクティーをホットで注文した。

飲み物が届くまでの間、壁一面ガラス張りの大きな窓に目を向け、外を眺める。


「わぁ。綺麗」


庭に立ち並ぶ桜の木が風に吹かれ、花弁を舞い散らしていた。

その下には白無垢姿の花嫁と、袴姿の花婿。

絶好のシャッターチャンスに、両手の親指と人差指でカメラを作り、そこから覗く。

当然、プロのカメラマンもこのタイミングを逃しはしない。

風が吹くたび、素早く風下に回り、夢中でシャッターを押している。

でも、今日の風はなかなか意地悪だ。

微妙に風向きが変わり、まるでカメラマンと遊んでいるかのように、風がカメラマンを振り回す。


「ふふ」


右往左往するカメラマンの様が微笑ましくて、小さく声を出して笑うと、どこからか幼い声が掛かった。

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