溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情


「わぁ!すごくいい眺め」

「気に入ったか?」


すぐ側から声が聞こえたので振り返ると、吉池さんがキャリーバッグを手に斜め後ろに立っていた。


「あっ!ごめんなさい。自分で運びます」


玄関先に置かれたものだと思っていたから慌てて手を伸ばす。

でも、どこが私の部屋なのか分からないことに気付き、室内を見回すと、今更ながら部屋の広さに驚かされた。

キッチンとリビングは、家具と床材が木のぬくもりを感じさせるダークブラウンで統一されており、リビングの隣には畳の部屋が続いている。

和の雰囲気が部屋全体に落ち着きを与えてくれ、実家の自室も和室だったので気持ちが幾分、和らいだ。


「ここ、閉められるんですね」


リビングとの境界にある襖に気が付いた。


「閉めれば個室スペースになるから。両親が来た時や急な来客があった時に使っている」


吉池さんの言葉に頷きながら、この和室が私の部屋になるのだろうと予測して、足を踏み入れようとした。

にも関わらず、吉池さんがリビングからキャリーバッグを持って出て行ってしまったので、急いであとを追う。

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