溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情

金銭感覚の違い


"日本の良き文化を世界に発信する施設"と謳われたショッピングモール内には有名な高級和菓子店や宝石店などが名を連ねている。

その中には吉池さんが買ってきてくれたキーホルダーを扱う呉服店もあった。

でも、どのお店も敷居が高くて、結局入れず終い。

これからどうしよう。

今、何時かな、と時間を確認するためにスマートフォンを鞄から取り出すと、吉池さんからメールが届いていた。


【ピロシキ美味しかった。ありがとう。もし可能なら明日からも軽めのお弁当をお願いしたいんだが】


食べてくれたんだ。

それに明日からもお弁当を、だなんて、早速必要としてくれたことが嬉しい。


【任せてください!】


張り切った返信を送り、お弁当箱を探すために気合いを入れて店内へと足を向けた。


「わ。これ、素敵」


勇気を出して入った食器専門店。

そこで目を引いたのは白木の曲げわっぱ弁当箱だった。  

"紀州漆器職人が仕上げた国産弁当箱"と書かれたお弁当箱は品があり、また手触りもとても良く、お弁当箱のそばには色とりどりのあずま袋も置いてあり、吉池さんをイメージして選ぶのが楽しかった。

でもお弁当箱の値段を目にして手が止まる。


「お弁当箱に八千円?あずま袋と合わせると1万円?!」


さすがに即決出来る金額ではなかった。

手持ちがないという理由ではなく、お弁当箱に一万円もかける必要性に疑問を感じたのだ。

お弁当箱が必要であることに変わりはないのだけれど。
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