溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情


「吉池だ」


答えに辿り着く前に、彼が名乗った。


「吉池湊。覚えてないか?」

「よしいけみなと?」


思い出すように声に出して、それから頭の中で何度か復唱する。

よしいけみなと…よしいけみなと……


「あっ!もしかして兄の友達の」


中学からの同級生でよく一緒にいた人で、たしか最近になっても兄は彼のことを口にしていた。


『湊は高校卒業と同時に渡米して、留学先の在学中に人工知能を扱う会社を起業して成功したんだ。凄いよなぁー!』


特集が組まれた雑誌を手にして興奮気味に言っていた。


「いつ帰国されたんですか?」

「1年前だ。ハルから聞いていないか?」


それについては聞いたような、聞いていないような。

答えを曖昧にして黙っていると彼は私の頭上から足元に視線を上下させ始めた。

今日は普段よりかなり身なりに気を使っている。

お見合い、ということで失礼のないように白のツイードのワンピースに白のパンプスを新調し、肩甲骨まである黒髪は美容院でハーフアップスタイルにしてもらった。
< 8 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop