飼い犬は猛犬でした。


 幸せな時間はあっという間に過ぎるとはよく言うけど、こんなにも時間が経つのが早く感じるなんて……

 校門が目に映ると、涼輔くんはわたしを強く抱き締めて耳元で囁いた。

「先輩……好き、っス」


 涼輔くんはわたしから離れると、真っ赤になった顔を逸らした。

「わ、わたしも……」
「また放課後一緒に帰りましょうね!」

 涼輔くんはそう言うとわたしに手を振って一年生の校舎に向かって歩き出した。


 うう、朝からこんな糖度高めなんて、もう心臓持たない……


「おっはよー!」
「……! お、おはよ!」

 イオに後ろから肩を叩かれ、思わず肩が跳ねる。

「どしたの? なんか様子が…………何これ……」

 イオはわたしの方を凝視しながら少しずつ近付いてくる。

「はぁ……ついに涼輔くんは鈴香のものになってしまったってワケね」

 残念そうに呟くイオの言葉に、なぜバレたのかと疑問が浮び上がる。

「ラブラブなのはいいけど、キスマークくらいは隠しときなさいよね!」

 そしてイオはそう言うとわたしの首筋に絆創膏を貼ってくれた。


 キ、キスマーク……?
 いつの間にそんなの付けられたの?!

 全然分からなかった……
 
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