勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
その日の放課後、



萌ちゃんがスマホ片手に駆け寄ってきた。




「彩梅、今日の放課後って暇?」




「うん?」




「これからラクロス部のOG訪問で、



大学の部活見学に行くんだけど、



真希と花江が古典の補習に引っかかって



一緒に行けなくなっちゃってさ」




萌ちゃんはラクロス部のキャプテンとして



バリバリ活躍しながらも、



成績はトップクラスという万能少女。




大学では強豪の体育会系ラクロス部に入りたいと、



いろいろな大学を見学してまわっている。




「急なんだけど、もし放課後空いてたら、



一緒に行ってもらってもいい?」




「ここから遠い場所じゃなければ、大丈夫だよ!」




「わりと近くだし、すぐ終わると思う! 



さすがに一人で行く勇気はなくてさ」




「うん、いいよ!」




笑って答えると、萌ちゃんが私の手をとり、



がっしり握手。




「じゃ、放課後、一緒にK大によろしく!」




「え⁈」




「いいじゃん、暇なんでしょ?」




「そ、そうだけど、で、でも、K大?」




「そう、K大。なにか問題でも?」




萌ちゃんの目が意味深に吊り上がる。




「ちょ、ちょっと待って。こ、心の準備が!」




「大学を見に行くだけなのに、どうして心の準備が必要なの?」





「だ、だって」




きゅっと唇をかんで下を向く。




「九条さんの通ってる大学だから?」




「う、うん」




「会いたいんでしょ?」




「あ、会いたいけど、でも」




大学の構内をセーラー服姿で歩いているところを



九条さんに見つかったら、



……怒られる気がする。




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