勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「じゃ、私は先輩のところに行ってくるね。



そんなに時間かからないと思うから



九条さんを探しながら、この辺で待ってて!」




萌ちゃんが校舎へ向かうと、



きょろきょろとあたりを見回しながら適当なベンチを探す。




ここが九条さんの通ってる大学……




レンガ造りの歴史を感じさせる建物と、



大きな枝を広げる幹の太いソメイヨシノ。




うちの大学とはくらべものにならないほどの広大な敷地に、



たくさんの人が行き来している。




せめて遠くから、ほんのちょっとだけでも、



九条さんの姿を見ることができたら嬉しいな。




ドキドキしながら、あたりを見回すけれど、



さすがにこれだけ広い場所で特定のひとを見つけるのは、



至難の業かも。




半分諦めかけたそのとき、



校舎からひときわ華やかな高い声が響いてきた。




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