勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。

浅草デート

料亭からタクシーで移動すると



すぐに浅草の雷門の前に到着。




振り袖姿で浅草を歩くなんて、


まわりから浮いてしまわないか心配だったけど、


思っていたよりも着物を着ている人が多くてびっくり!




「レンタルしてるから着物とか浴衣を着てる人、多いだろ」




「はい」




「でも、彩梅さんの着物が一番綺麗」




……うっ。




「こ、これは、祖母の着物で……」




「色白の彩梅さんに、すごくよく似合ってるよ」




「あり、がとう、ございます」




言い終わらないうちに、恥ずかしくなって下を向く。




着物を褒めてもらえるのは、


もちろんすごく嬉しい……。




でも、九条さんの褒め殺しみたいな感じは、


ちょっとだけ(かなり?)心臓に悪い。




大人の男の人ってみんなこんな感じ……?




それとも、お見合いした時には、


褒め合うのが礼儀だったりするのかな?




「着物、好きなの?」




「は、はい、それに、こういう場所もすごく好きです」




雷門からまっすぐに続く仲見世通りと、その奥に佇む浅草寺。




背の高い九条さんを見上げて、



九条さんの着物姿を想像してみる。




うん、九条さん、着物も似合いそう!




その瞬間、眩しい光を浴びて、ぎゅっと固く目を閉じる。




そっと目を開けてみると、



周りをカメラやスマホを手にした


外国人観光客らしきひとたちに囲まれていて。




こ、怖いっ!



思わず一歩、後ずさる。




すると、ぐいっと腕をひっぱられて


九条さんの背中に隠された。





< 22 / 250 >

この作品をシェア

pagetop