勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
家族で何度か食事に来たことのあるこの料亭には、



たしか立派な日本庭園があったはず。




時計を見ると、うん、約束の時間までまだ余裕がある!




「お母さん、ちょっと庭園を見てきてもいい?」




「あまり遠くにはいかないでね? すぐに戻ってね」




うなずいて返事をすると、



長い廊下を抜けて、庭園の入り口へ。




でも、こんなに素敵な振袖が着られるのなら、



お見合いも悪くないかも!




着物を着てしずしずと歩いていると、



少しおしとやかになったような気分になるし、



背筋がシャンと伸びるから不思議。




でも、朝ごはん食べないで来ちゃったから、



なんだかお腹が空いてきた……




そんなことを考えながら帯に片手を添えて、



重い扉を開ける。






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