時には風になって、花になって。




そしてやはり声が出る。

ガラガラと痰の混じったような音、今の自分は妖怪と人間の間。



「…やっぱりサヤは……狼だったんだね…」



それが嬉しいのか、哀しいのか。

私は今どんな顔をしているだろう。


けれど紅覇はそんなサヤを見つめ「大丈夫だ」と、やさしい目をした。



「小娘よ、貴様の母親はウタという女だろう」



その名を聞いたとき、毛の逆立つような感覚を放ったのは隣に立つ青年だった。

彼を見つめた羅生門はとても気持ち良さそうに笑う。


立ち上がり、私達に近づいて来た。



「妖狼一族、そしてウタの旦那を滅ぼしたのは我だ」



ウタの、旦那───…

それはつまり…。



「つまりお前の父親を殺したのは、この羅生門だ」


「…!!」



母親は殺し損ねたがな───と、男は言う。


この人は紅覇のおっとうだ。
そしておっかあの名前を知っていた。

どうして知っているの?

紅覇もそうだった。


みんなサヤのおっかあを知っている。



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