時には風になって、花になって。




例えまた断られたって。

それでもサヤは引く気はなかった。



「…好きにしろ」



あれ、なにか伝わっちゃってたかなぁ。

紅覇が優しい。
それは今までもずっとそうだったけれど。


その日までは野宿がいいと伝えて、行きたい場所や見たい景色の話もした。

それは2人が今まで歩いた村や道。



「サヤ、大きくなった?」


「…あぁ」


「昔のサヤってどんなだった?」


「…どんぐり」



たくさん話したいことがあるんだよ、サヤ。

今まで声が出なかったから伝えたいことなんかほとんど言えなかった。


でもそっか。

もし妖怪の道を選べば、こうして話せるようになるんだ。



「どんぐり…?なぁにそれ」


「常にコロコロしていた。ついてきては見失い、木から落ち川に落ち」


「あぁ…確かにサヤ、どんぐりかぁ」



並んで眠る紅覇へと、ぎゅっと抱きつく。


サヤはずっと子供でいい。
サヤはサヤでいたい。

そう思うのに、紅覇がウタという存在を愛していたと聞いたとき。


───…哀しかった。



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