時には風になって、花になって。




カァカァカァ───…

バサバサバサッ!!!


2羽の烏は竹藪から竹藪へ。
赤く染まった空の中を黒色が追いかける。

墓の傍らで寝てしまった少女が目を覚ましたとき、ただならぬ異様な空気感に身体は硬直した。



「うまそうだなぁーーー」


「人間の小娘はうまいと評判だぜ」


「お前はどちらだ?小娘がいいか?それとも魚か?」



寝たふりをしていようか、今すぐにも逃げた方がいいか。

小さな頭でサヤは考える。


母親の墓石の上にどっかりと座る存在は人間ではないこと。

それは見なくても微かな影で理解が出来た。



(だ、誰か……)



少女は物理的に声が出ない。

それが吉と出るか凶と出るか。


このまま身体の震えだけを抑えれば乗り過ごせるだろうか。


でも───…



(おっかあの元へ行ける…?)



少女は思った。

たった1人で生きる毎日。
野盗に母親を殺されてから、孤独だった。


もしここで生を終えたとしたならば、次目覚めたとき、母親に会えるんじゃないかと。



「なぁ、さっさと喰っちまおうぜ」


「そうだな」



スッと、影が小さな身体を覆った。



< 2 / 180 >

この作品をシェア

pagetop