BATEL
第12章 旅立ち
あれから一ヶ月が過ぎ旅立ちの日となった。

ママに髪をとかしてもらいながらクロエはルナの毛を手ぐしで撫でた。

ママ
「もう当分この髪をとくことができなくなるわね。」

クロエ
「ママ?寂しいこと言わないでよ!あっちついたら手紙書くからね!」

ママは少し涙目になっていた。

ママ
「わかったわ。ほら、支度しなきゃ!」

タンスからママの秘密の部屋からとってきた服を取り出した。

黒のコルセット風ワンピースで胸元は大きく開き小さな谷間が覗かせ、丈は膝上で金の刺繍が施されていた。歩くたびにワンピースがなびき、黒と金のフリルがゆらゆらと揺れた。その上に背中までしかない深めのフード付きのローブ、靴はヒールの高い真っ黒なショートブーツ、帽子は黒くて大きな鍔が広く三角のとんがり帽子だった。
鏡を見たクロエは

クロエ
「ママ....?ちょっと露出しすぎじゃないかな、、」

ママ
「いいのよ!これくらい!」

クロエ
「魔術士というより、、魔女だね。というか旅にハイヒールは大丈夫?」

ママ
「文句言わないの!私着たことないんだから!ハイヒールは....私の好みよ!ほら!なにもかもぴったり!」

ママは魔術士ではなく暗殺者だったのでワンピースなんか着ないことは分かっていた。

クロエ
「ママ好みだね!ハイヒールは頑張って慣れるよ!」

ハイヒールでママより少し身長が高くなり駆け出しの魔術士というより見た目は立派な若い魔女だった。

ママ
「私は鞄や袋を持って旅は嫌いだったからいつもベルトに付けていたわ。」

そう言ってベルトに小さな皮袋を1つ、後ろには大きめの取り出しやすい皮で作った鞄をつけてくれた。
そして左の太ももにもベルトを巻きそこには取ってきた覚えの無い真っ黒なダガーを付けた。

クロエ
「ママ、これは?」

ママ
「護身用よ。」

そう言いながら笑顔でママは付けてくれた。
刀身は真っ赤だった。

(もう完全にママ好み...)

ママ
「君にはこれね。」

子猫のルナに真っ赤な皮の首輪に刺繍でルナの文字が刻まれてあった。

クロエ
「かわいい!これ!ママありがとう!」

にゃあ!

ママ
「ふふ、喜んでくれたみたいね!ほら、朝ごはんにしましょう!」

衣類やタオル、下着をなどを詰めた大きな鞄も背負ってリビングに向かった。
リビングにはパパが珍しくいた。ここ最近は仕事が忙しかったみたいだった。

パパ
「おおー!.....魔女か?!」

ママ
「冒険者よ!もうみんなして...」

クロエ
「ママが選んでくれたんだから!かわいいでしょ!」

不満はかなりあったがママを庇うように言った。

パパ
「レビィもお前も居なくなったら寂しくなるな。」

ママ
「そうね。レビィも最近は忙しそうにしてて全然帰ってこないし...」

クロエはどんよりした空気を和ませようと必死で振る舞った。

クロエ
「やっぱこのホットミルクとクッキーだよね!ほら、ルナの分まである!」

ルナは小さな木の器にホットミルクをペロペロ舐めていた。

「おはようございます。先生。」

入ってきたのは綺麗な髪長いハーフエルフの清潔感溢れる白衣を纏った背の高い男性だった。

パパ
「おはよう。カルシャ。ああ、クロエ紹介しよう。この人が次の大陸まで乗してってくれるカルシャだ。俺の一番弟子だよ。」

クロエ
「こんにちは!カルシャさん!」

カルシャ
「お初にお目にかかります。カルシャ=スフィヤと申します。お父様の娘様はクロエ様でよろしいですか?」

クロエ
「クロエで大丈夫だよ!」

カルシャ
「クロエさんですね。」

カルシャは昔から今日にかけパパの一番弟子となり違う大陸で研究をし情報を共有しているそう。

カルシャ
「出発は午前の9時ですのでそれまで支度を。」

クロエ
「できてるよ!」

パパ
「お前....そんな装備で大丈夫か?!肌見せすぎじゃないのか?」

パパはクロエの身なりを見て片手には長い杖しかない姿を見て頭を抱えた。


ママとクロエは見つめ合い笑顔になり、二人で

ママ
「この子なら大丈夫よ。」

この子ならとはどうゆうことか分からなかった。


クロエ
「大丈夫だよ!ほら!クッキー食べなきゃ!」

パパはため息をし、カルシャに

パパ
「すまない、カルシャ。後は任せた。うちの娘を頼むよ。」

カルシャ
「あなたよりお母様に良く似てらっしゃいますね。命を変えてでもお送り致します。」

カルシャは一足先に船に戻ることになった。
クロエは帽子を机に起きママの洗濯を手伝いに庭に行った。

クロエ
「ママ?大丈夫?」

ママ
「私より自分のことを心配しなさい。」

クロエ
「パパと仲良くね!」

ママ
「あら、いつも仲良いわよ!」

二人で布団を干し終えた。

「おーい!クロエー!」

そこには3人とも逞しくも駆け出しと言って相応しい姿だった。

レイはいつもより固く結ばれた髪に白いシャツを脛まである茶色のズボンに入れてその上に茶色の皮ジャケットがワイルドに見せる。肩がけのリュックに腰には剣を2本携えていた。

ゾーイは襟がピンと立った黒のシャツに黒の皮ズボン、その上に紺色の半袖の皮ジャケット。袖から筋肉が見え誰よりも力がある印象となり背中には重そうな大きな大剣を背負っていた。
ゾーイの大剣は誰にも振れず小指には魔道具の指輪の力でゾーイのみ扱えるようになっていた。

メルは真っ黒な格好のクロエとは裏腹に真っ白でショート丈のボタン付きシャツに胸元は大きく開きクロエよりも膨らみがあり谷間が見えていた。足は見せず紫色一色のロングスカートに黒のブーツだった。帽子はクロエよりも小さな薄紫のとんがり帽子。背中には杖。
やはりヘソは出さないといけないスタイル。

メル
「クロエの格好可愛い!」

クロエ
「メルの方こそ!どこで買ったのー?」

レイ
「俺ら3人共メルーン王国で買ったよ。にしてもクロエ、お前魔女だな。」

ゾーイ
「その猫どした?」

クロエ
「新しい仲間だよ!名前はルナ!」

ルナはクロエの大きなフードから顔を見せて飛び出し皆の前でおすわりをした。

「にゃあー!」

レイ
「5人目の新しい仲間だな。よろしくな、ルナ!」

メル
「ちょーうかわいー!!」

メルはルナを抱きしめ激しく撫でた。
ルナは苦し紛れに逃げクロエのフードに逃げ隠れた。

クロエ
「メルーン王国で迷子になってたのを私が拾ってきたの。」

ゾーイ
「迷い猫が多いよな。」


レイ
「んじゃ桟橋行くか。」

クロエ
「ママ!!行ってきます!」

ママ
「帽子!帽子!!」

ママは急いで帽子を取りクロエに被せほっぺにキスをした。

ママ
「手紙書いてね!」

クロエ
「うん!ママ!行ってくるよ!ママ大好き!」

ママ
「私もよ。愛してるわ。」

そしてクロエ、レイ、メル、ゾーイは4人パーティとして出発した。

クロエ
「ちょっと先に桟橋行ってて!すぐ行く!」

レイ
「はよ来いよー。」

クロエ
「わかった!」

クロエは飛ばないように帽子を押さえながら走った。丘の上だった。

クロエ
「はぁはぁ、、ゼトおばさん!!」

ゼトおばさん
「おやまあ、素敵な魔法使いですこと。」

クロエはゼトおばさんに抱きついた。

クロエ
「ゼトおばさん。行ってくる。」

ゼトおばさんは優しくクロエの頭を撫でてこう言った。

ゼトおばさん
「あなたはとても優しい子よ。次に帰ってくる時は旅のお話を聞かしてちょうだいね。」

クロエ
「分かった。」

クロエはゼトおばさんが大好きだった。
小さな頃からゼトおばさんの話を聞くのが好きだった。
困った時、悩んだ時はいつもゼトおばさんに会いに来た。

ゼトおばさん
「ほらほら、泣かないの。さあ、お行き。」

ゼトおばさんはクロエの涙を拭い笑顔で見送った。

クロエは元々旅をする気はなくこの村で死ぬまで暮らすんだと思っていた。だがゼトおばさんのいくつものお話を聞きこの世界はどれだけ広いのかどのようなものなのか興味が湧き冒険者になることを決意した。

(もし、歳をとりゼトおばさんみたいに子供たちにお話しできればいいな。みんなから愛されるような人に、そうなりたいな。)


クロエは桟橋に向かった。
桟橋に着くとそこには見たことのない大きな貿易船だった。
帆が4つに監視塔3つ格納庫が2つとメインマストには国家が飾ってあった。乗組員が10名弱。

カルシャ
「クロエさん。こちらの方たちはお仲間でしょうか?」

クロエ
「あ!カルシャさん!私の仲間のレイとメルとゾーイだよ!」

レイ
「どもっす。」
ゾーイ
「よろしくお願いします。」
メル
「よろしくでーす!」

カルシャ
「いいお仲間さんですね!さあ出発しますよ!」

レイ
「とうとう俺らの旅が始まるんだな。」

ゾーイ
「だな。」

メル
「楽しみだね!」

クロエ
「みんな!行ってくるよ!」

船長
「さあ出発だ!!」

4人は船に乗り甲板に乗り桟橋に来た身内に手を振った。

キール村が遠くなるまで手を振り続けた。

船長
「お前ら4人!この船に乗りゃあ5日で着くぞ!よかったなあ!ガハハハハハ」

レイ
「はぁ?!5日もかかるのかよ〜」

メル
「地道に焦らず行こうね!」

ゾーイ
「この船じゃなかったらもっとかかるってことか。」

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