BATEL
第18章 新メンバー
キール村〜


送達士
「おくさーん、手紙ですー!」

ママ
「はーい。いつもご苦労様。」

パパ
「クロエからかい?」

ママ
「もうクロエがこの村を出て半年になるわね。」

パパ
「まだあの国にいるのか?」

ママ
「そうみたいね。」

パパ
「あいつが元気だったらそれでいいさ。」


メルーン王国〜


「只今より各国の魔女狩りの被害について三大陸国会会議を行います。まずレムリア大陸の国王方からお願いします。」

バミリオ王
「メルーン王国はこの魔女狩りに伴い低ランクの冒険者のパーティにA〜Sランクの冒険者を1人配属し任務、訓練を行い『黒海団』に対する防衛術を身に付けより強い冒険者として教育を持続。魔術士であるクラスは冒険者ではなくこのメルーン国兵になり兵の管理下の元任務をこなしておる。」


サウセル国王
「バミリオ王と同じだ。」

ニーラマナス国女王
「メルーン王国の傘下ですわ。もちろんこの対策は乗りましたわ。」

「続いてエマ大陸の国王方お願い致します。」

ゴレアリア大国王
「わしの国はそんな事をする暇もないくらい任務依頼がなだれ込んでくる。そもそもA〜Sランクの任務はどうするのだ。」

バミリオ王
「A〜Sランクの任務は冒険者ギルドではなく国に渡し兵で賄う。魔術士が兵に来れば人数も補充でき任務も問題ない。」

ローデシア国王
「わしの国は長年魔術士は出ていない。対策など必要ない。何せ小国で依頼任務すら少ない。」

ハザール大国王
「うむ。メルーン王国のバミリオ王の考えは実に素晴らしいのぉ。わしの国も真似してみようではないか。」

ヴァンダル王国女王
「私の国は私含め殆どが魔法を使える。今の話を聞くとまだレムリア大陸、エマ大陸には魔女狩りの被害の報告は出ていないと?」

「そうなりますね。」

ヴァンダル王国女王
「その『黒海団』という連中から身を守るより討伐隊を出してみてはどうでしょう。」

リーグレ司教国王
「私はヴァンダル王国女王の意見に賛成だ。」

「最後にアトランティス大陸、アトランティス国王お願い致します。」

アトランティス国王
「アトランティスの国ではこの半年で2件の被害報告を受けた。早急に『黒海団討伐隊』を魔術士、アサシンのみで編成した。国民、兵隊、冒険者、全ての民を調べた。」

ハザール大国王
「そんな若いのにお主やるのぉ。全て調べたのか?!」

アトランティス国王
「そう。全て。くまなく血眼になって探した。そしてそいつを見つけ捕らえ尋問した。」

バミリオ王
「どんな奴だ?」

アトランティス国王
「人間族の冒険者で言うSランクの人間だ。」

バミリオ王
「Sか!よく捕らえる事ができたな。」

アトランティス国王
「捕らえるだけで30人の兵に20人の冒険者を失ったがな。ちょうどSランクの冒険者達は任務で国から出ていたのだ。Sランクがいれば被害はこう酷くならなかった。」

ハザール大国王
「それで?何を話した?」

アトランティス国王
「何も。奴は何も話せない。」

リーグレ司教国王
「どうゆうことだ?」

アトランティス国王
「何も話す事ができない、だな。なんらかの呪いの呪印が舌に施されている。もし囚われ尋問され拷問されてもいいようにな。だから奴は捕らえた後日に死んだ。」

ヴァンダル王国女王
「その呪印は?何か書き留めていませんか?」

アトランティス国王
「呪印に詳しい貴女がいるので.....こちらを。」


アトランティス国王の懐から紙切れを出した。


ヴァンダル王国女王
「なかなか古い呪印ね。」

バミリオ王
「なんとか解けないか?」

ヴァンダル王国女王
「解けないこともないけど解く最中に喋られたら死ぬわ。術者を殺さない限りこの呪印は解けない。」

アトランティス国王
「頭を叩くしかないか....」

バミリオ王
「元々メガラニカ大陸のマサ国王直属の暗殺部隊が集いも集って初めた事だ。術者はそのマサ国にいるはず。」

ゴレアリア大国王
「でもおかしくねーか?」

バミリオ王
「何がだ?」

ゴレアリア大国王
「そこの王は昔から鉱石や炭を高く買ってくれるお得意様だ。もちろんお前らも知ってると思うがマサ国ってのは貧しく冒険者ギルドもない小国だろ?つい先月鳩便でやりとりしたばかりだがそんな魔女狩りなんてするような奴じゃない。」

バミリオ王
「2ヶ月前にわしの使徒を5人マサ国に送らせたが未だに帰ってきていない。」

サウセル国王
「死んどるな。確実に。」

ニーラマナス国女王
「これは宣戦布告です。すぐさま兵を編成しマサ国を落としましょう。」

ゴレアリア大国王
「待て待て。お得意様だって言っただろう?そんなことをする奴じゃねーんだよ!」

アトランティス国王
「私の部下に偵察をさせ確認次第、お前たち二体陸に鳩便を飛ばす。その時また兵を集め攻めるか決めよう。」

ヴァンダル王国女王
「先程バミリオ王が言ったことを忘れたんですか?送らせても死体になって帰ってくるだけですわ。」

アトランティス国王
「私の部下は偵察や暗殺術のみを伸ばしたスパイ軍団。誰にも見つからず1人も欠けることも無く帰らせよう。」

ヴァンダル王国女王
「強気ね。」

バミリオ王
「アトランティス国兵はいい人材が揃っとるとは聞いておる。毎年の世界から集う悪魔族殲滅部隊はアトランティス国から何人もの戦士や魔術師が先発されておる。この件はアトランティス国王に任せるとしよう。」

バミリオ王
「それで....話を戻そう。私の意見に賛成の者は。」

各国の国王や女王はそれぞれの羽ペンを上に掲げた。そしてメルーン王国の使徒は立ち上がった。

「それでは各国よりバミリオ王の意見を尊重し冒険者のパーティには明日からでも対策をお願い致します。本日はこれにて三大陸国会会議を閉会致します。」



城外には王族を乗せる豪華な馬車が参列しメルーンの民を魅了した。
王族達は馬車に乗り次々と自分の国に帰った。


「どうでしたか?三大陸国会会議とやらは...」

アトランティス国王
「ああ。くだらない話だったよ。」

「トリトン様はいずれこの海を統べるお方。このような国会など参加する必要はないのでは?」

アトランティス国王 トリトン
「信用....が必要だ。で、黒海団の状況は?」


「はい。三大陸全ての国に黒海団2名ずつ配属致しました。」

トリトン
「決行は1ヶ月後それまで各国に散らばった黒海団は準備を整えよ。奴らは俺を信じきっている。そしてこの三大陸全て我が物となるのは近い現実となるだろう。」



ゴレアリア大国にて


レイ率いる4人パーティは毎日任務をこなし皆強くなり成長していった。
今ではブロンズの指輪を返しCランクのピンクゴールドの指輪をはめた。
皆、お金を出し合ってボロボロになった服や武器は買い替えた。1人を除いて。

メル
「クロエー!任務に行くよ!」

クロエ
「はーい!」

メル
「そろそろ装備変えたらー?」

クロエ
「いいよ!大丈夫!私のより皆の装備優先して買い替えたらいいよ!」

レイ
「んじゃいこか。」

ゼフ
「今日は早いな。頑張ってこいよ。」

ゾーイ
「行ってくる。」

4人は冒険者ギルドに向かった。
いつも以上に冒険者ギルドに群がる冒険者達がいた。

レイ
「何かあったのか?」

ファリア
「よぉー。お前らも来たのか。」

レイ
「なんの騒ぎだ?」

ファリア
「なんたって今日からA、Sランクの任務は無くなるそうだ。」

メル
「どうゆうこと?んじゃあA、Sランクの冒険者はどうなるの?」

ファリア
「さあな。今からギルド長が話すみたいだ。」

ギルド長
「えーコホンッ。えー先日、メルーン国にて三大陸国会会議が行われました。皆も知っている通りこの世界各地で『黒海団』という組織の魔女狩りにより被害が相次いでいます。その組織はA、Sランクの魔術師の女性を狙っています。先ずはA、Sランクの魔術師の女性は一先ずこのゴレアリア大国の魔術兵として保護します。これは強制です。」

ギルド長
「そしてもう1件。A、Sランクの方達は魔術師の女性以外はE〜Bランクのパーティ1人ずつ配属し共に任務をこなし黒海団に対する訓練を身につけるよう教育をお願いしたい。それが国王陛下の望まれている意見。皆をお守りする為でございます。」

レイ
「E〜Bランクか。」

メル
「ねえ、そもそも魔法しか使ってなかった私とかどうすればいいんだろう。」

ファリア
「あの!すみません!ひとついいっすか。」

ギルド長
「はい。」

ファリア
「狙われているのはA、Sランクの魔術師の女性のみという確証はあるんすか。」

ギルド長
「確証はない。だが被害を受けた女性は必ずA、Sランクの魔術師です。」

レイナ
「あの!!E〜Bランクの冒険者もいずれ上がっていきます。魔法を使ってきた人はどうしたらいいんでしょうか。」

ギルド長
「それを今から説明します。えー。今質問にもありました。これはこの国だけの問題ではありません。魔法を禁止するというのは少し無理な話です。が、魔術師はこれよりクラスを変えて冒険して頂かなければなりません。その為のA、Sランクの方が冒険者パーティに配属する意味でもあります。」

皆衝撃が走った。
今まで頑張ってきたのは何だったのか、ただ反論は出来なかった。
冒険者皆命が惜しかった。
もし魔法を使っているところが黒海団に見られたら殺される。
次は女ではなく男かもしれない、確証はない。しょうがなかった。


そして下位各パーティには上位ランクの冒険者が配属した。

宿のロビーには4人集まり暇を持て余していた。

レイ
「んだよー1人配属って。しかも1人登録しなきゃ任務受けれないし。」

ゾーイ
「まあしょうがないだろ。このご時世。戦争に駆られるよりマシだ。」

メル
「そりゃそうだけどさー。メルなんのクラスになればいーのよー。」

クロエ
「冒険が出来るだけいいの....かな。」

ゼフ
「黒海団ってのはただビビっとるだけだろ?」

レイ
「悪魔族が怖いからって全く関係のない魔法が使える者を殺してるだけだしな。」

メル
「魔法使える=悪魔族 ってのはおかしい話だよね。そりゃさ!悪魔族は魔法皆使えたかもしれないけどさ。話が極端すぎるのよ。」

クロエ
「なんで狙われるのは女性なの?」

ゾーイ
「かつて世界を滅ぼしかけた悪魔族は皆、女だった。ただそれだけだろうな。」


ガチャッ....

珍しく宿のロビーのドアが開いた。


「よお。元気してるかなー?」

クロエ
「ペイン!」

レイ
「おっさん誰だー?」

ペイン
「んー。まあそこのクロエの叔父と言いますか。。。」

ゾーイ
「へぇ。お前に叔父なんていたんだな。」


ペインはドカッとロビーの椅子に座り持っていた酒瓶を取り出し呑んだ。
半年前から変わらず酒呑みでマイペースで気楽な性格、口調は冷静沈着は変わらなかった。

ペイン
「聞いたよ。冒険者も大変だなー。」

メル
「おじさんは冒険者?」

ペイン
「おじさん言うんじゃないよ。ペインって呼べよー。まっ俺は放浪者かな。」

レイ 
「んだよ。それ。」

ペイン
「まあ、聞いてるだろ。上位ランクも皆下位パーティを見つけて入ってる。」

レイ
「俺ら上位ランクパーティじゃなくてよかったな。俺らバラバラだ。」

クロエ
「はは。そだね。」

ペイン
「で、決めたんだが、俺がこのパーティに入ってやる。」

クロエ レイ メル ゾーイ
「はぁー?!」

ペイン
「お前らももう1人上位ランクの人入れなきゃいけないんだし俺が入ってやるよ。」

ゾーイ
「それもそうだが....」

レイ
「そもそもおっさ....ペインさんは強いのか?」

ペイン
「おいおい...俺をあまり見縊るなよー。冒険者も5年前に引退したがSランクの上位だったんだぞ。」

クロエ メル
「へぇ〜。」

ペイン
「そこ2人!!今疑っただろ!!」

ゾーイ
「知らない奴入れるよりクロエの身内だったら俺らも親しみやすい。いいんじゃないか?」

ペイン
「おっ。君わかってるねぇ。」

レイ
「んじゃ早速冒険者ギルド行って登録して任務するか。」





ナーシャ
「あら、ペインさん。ご無沙汰してます。ペインさんなら登録できますね!今までどこにいらしたんですか?」

ペイン
「ちょっとな。ぶらぶらしててね。」

ナーシャ
「相変わらずマイペースなお方ですね。それではご登録しましたよ。それともう一つ。レイくん...がリーダーだったよね。パーティに名前をつけないといけなくなっちゃったの」

レイ
「なんで?」

ナーシャ
「各国に在籍する人を1人1人登録し更にパーティの名前を登録したらどのパーティに誰がいるって分かるからそうしたのよ。だんだん治安も悪くなってきたしね!で、なんて名前にする?」

レイは4人を見た。

ゾーイ
「踊れキール村ブラザーズ」

メル
「稲妻サンダーファイブ」

クロエ
「酔いどれパンツマン」

ペイン
「ペインと良い子の仲間たち」

レイ
「......おい。真面目に考えろ。」

ゾーイ
「そんな急に言われてもな。」

メル
「そんなことより早く帰って皆でバテルでパーッとしようよ!ペインさんの歓迎会でさ!」

レイ
(皆でバテル.....バテル.....)
「ナーシャさん、バテルで。」

ナーシャ
「相当シンプルで覚えやすい名前ね!」

クロエ
「飲み好きの集いみたい。」

メル
「間違ってないよー?」

ナーシャ
「はーい。登録しましたよ!じゃ任務受けたらまた来てね!」


レイたちは森の中のDランクのレザリアスパイダーの討伐を任務を受け森を目指した。

メルは破壊魔法を軸とした戦いをして敵に遠距離から魔法を当てる事を知りペインは弓術を教える事になった。
クロエは皆に強化魔法をかけパーティ全員にバフをかける戦闘を得意としていたがペインは常にセリアからもらった一度も使われないダガーを身に付けていたのは分かっていた。近接でダガーを使うように教えた。


メルとクロエの攻撃メインで任務は行われた。

ペイン
「メル。あの木があるだろ。あそこに打ってみろ。」

メル
「当たるかな....」

メルは弓の弦を思いっきり引き放った。

シュパッ

見事に木に命中した。

ペイン
「お前、ほんとに弓使うの初めてか?」

メル
「へへっ。」

ペイン
「お前はいいや。戦闘で慣れて素早く引くことを覚えろ。まずレイとゾーイ、クロエは近接戦で戦い、漏れた敵を撃て。こいつらの剣が交わり戦闘中の敵は............まあ味方に撃たないように撃て。」

レイ
「なんだ?今の間は。」

ゾーイ
「頼むから剣を交わっている最中は撃つなよ。」

ペイン
「んで、クロエ、ダガーを持って構えてみろ。」

カチャッ

ペイン
「ダガーは逆手に。そして態勢は低く。お前はレイとゾーイの相手をする敵の不意打ち役だ。」

クロエ
「分かった。」

ペイン
「ダガーはリーチも狭く敵の攻撃が当たりやすい。そして急所を狙わない限り大きなダメージは与えられない。1対1なら逃げろ。必ず後ろを取れ。」

クロエ
「後ろ....」

ペイン
「レイとゾーイの敵をかすり傷でもいい。怯んだ敵をこの2人が仕留める。足を狙え。急所は狙わなくてもいい。」

クロエ
「急所は?どこ?」

ペイン
「んーどんな敵でも首かな。まっ気にしなくていいよ。ほら、」

ペインの指を刺す方にはレザリアスパイダーが群がっていた。
5人は木陰に身を潜めた。

ペイン
「俺は手を出さない。お前らがやれ。危ないときは俺が助ける。んで君は俺とお留守番だ。ご主人はいつものように静かに戦う事はないからな。」

ルナ
「んにゃ?」

ゾーイ
「Dランクの任務だろ?余裕だ。」

ペイン
「それはクロエの強化魔法とメルの破壊魔法があればな。ただもうこいつらは使えない。今までの戦闘のようには上手くいかない。いいか、まずは....」

レイ
「行くぜ!!」

ゾーイ
「ああ。」

2人は突っ走って行った。

ペイン
「おい!!」

メル
「話は後ね!先生。メルたち話聞くより実戦で覚えるパーティだから。」

そう言ってメルは弓を使い走る2人の前方の敵を狙いを定め撃った。
矢が敵を貫き次々と矢を放った。

レイ
「おーおー。やるねぇ。メル。」

レイは回転しながら両手剣で敵を断頭。

ゾーイ
「あいつの遠投術は天才だからな。」

ゾーイは大剣で敵を突き刺した。

ペイン
「クロエ。いいか。敵は多足類だ。敵の足を.....」

クロエは走り出していた。

ペイン
「せっかちな奴らだ。」

クロエ
(1対1なら逃げろ。だよね!蜘蛛なら足いっぱいあるし足を切ろう。)

クロエは走り出し横を向いた蜘蛛の足を切り蜘蛛は態勢が乱れ地面についた。
それを見たクロエは次の敵に向かった。

ペイン
「スピードは随一だな。」

メル
「メルたちの中ではクロエが一番足早いよ。誰もかけっこして勝ったことない。」

ペイン
「メル。次は矢を2本一気に撃ってみろ。」

メル
「こう?」

メルは矢を2本持ち放った。

メル
「わぁ!!」

2本の矢は乱れ違う方に飛びレイの頬をかすりかけた。

レイ
「おい!!危ねえだろ!!メル!!」

メル
「ごめーーーん!」

ペイン
「2本の場合並行に持て。そしたら真っ直ぐ飛ぶ。持つ角度、飛ぶ方向が分かれば2体。3本なら3体倒せる。」

クロエは次々と敵の足を切りドタドタと音を立てながら敵は地面についた。
そのとき振り向いたときドレスの裾が蜘蛛の爪に引っかかりクロエはお尻を地面についた。

クロエ
「やば!!」

ゾーイはクロエに襲いかかる敵を突き刺した。

ゾーイ
「大丈夫か?」

ゾーイの手を取り立ち上がった。

クロエ
「うん。ありがとう。」

ゾーイ
「その服は近接じゃ不向きみたいだな。」

クロエ
「うん。」


敵はあっという間に切り刻まれその破片が地面に散りばめられた。

ペイン
「終わったみたいだな。」

レイ
「楽勝だな。でもやっぱクロエの強化魔法欲しいな。剣が重たく感じるわ。」

ゾーイ
「だな。」

メル
「みんな死んだー?」

レイ
「みんな死んだー?じゃねえよ!俺が死ぬとこだったわ!!」

メル
「はは!ごめんって!」

クロエ
「ねえ、みんなー?服....買ってもいい?」

皆武器や防具を買っていたがクロエが初めてそう言い4人は驚いた。だが皆すぐ笑顔になった。

レイ
「当たり前だ。この後クロエの防具を買いに行こう。」

ゾーイ
「またそのフリフリに引っ掻かれたら助けなきゃいけないしな。」

メル
「メルが選んであげるね!」



ペイン
(ふふ。いいパーティだ。)



クロエ
「開けるよー?」

そこは防具屋の一室だった。
外には4人座りクロエの防具を見よう待っていた。

カーテンが開いた。

全身硬い甲冑に覆われ部分部分革ででき身軽さを追求した店主の自慢の一品だった。

レイ
「かっけぇじゃん。」

メル
「いい!それいいよ!!」

クロエ
「んー。重い......」

ペイン
「しょうがねえだろ。ダガー使いは敵の懐に潜り倒す一番危ないクラスなんだ。軽装だとこんなもんで上等だ。」

ゾーイ
「いいんじゃないか?とりあえず俺腹減ったから先宿戻るわ。」

メル
「メルもー。」

ペイン
「それで決定だな。俺も先行っておくぞ。」

3人は宿に向かった。

クロエ
「んー。」

残されたレイはクロエの不満そうな表情を見た。

レイ
「はぁ〜。お前は気に入らなそうだったら昔からその顔するよな。」

クロエ
「え?!」

レイ
「ほら、脱げよ。付き合ってやるから気になる店あるんだ。」

レイがそう言って何も言わないままレイに付いて行った。

レイ
「どーせお前は身体を守るよりビジュアル的に気にくわなかったんだろ?」

クロエ
「なんで分かるの?」

レイ
「何年お前と一緒にいると思ってんの?あの3人より長いのは知ってんだろ。ほら着いてこいよ。」

クロエは笑顔になりレイの背中を追いかけた。





クロエ
「ねえ、ここって....」

レイ
「ああ。革工房の店だ。」

カランッ

「いらっしゃい!いらっしゃい!!!」

そう元気に発した人間族の少しぽっちゃりし背が高い黒人の男の子だった。声からして同い年くらいだろう。

ドリス
「客だ!!ばあちゃん!客!!ちょっと待っててくれ!!ばあちゃん!!!おい!!」

奥からお婆さんらしき声の方が

「なんだい!!うるさいよ!!」

ドリス
「ギャハハハハハハ!!そう言えばばあちゃん死にかけで耳遠いんだったわ!足もろくに動けなかったわ!ギャハハハハハハ!俺はドリスな!よろしく!!」

そう言ってクロエに大きく握手を求めて来た。クロエは引っ張られハグを軽く交わした。

「あんたー!!聞こえてるよ!!」

ドリス
「うるせぇ!!ぶち殺されてぇのか!!ギャハハハハハハ!!」

物凄く陽気で下品だった。

ドリス
「で、何の用?」

クロエ
「あ....あの、防具を....」

「今日の昼はマフィンにするから玉子買っといてくれ!!」

ドリス
「ちょっと待っててくれ。」

そう言ってドリスは裏に行き仲良く話す姿があった。
ただただドリスに圧倒され立ち尽くす2人だった。

ドリス
「いやーお待たせ。死にかけのババアなんて放っておくさ!ギャハハハハハハ!!」

「あんたー!聞こえてるよ!!」

ドリス
「てめぇは黙ってろ!!」

ドリス
「ああ自己紹介だったな!!俺はドリス。ここの若店主だ。」

レイ
「さっきも聞いたよな。」

クロエ
「う....うん。」

ドリス
「まあ、そう言うなや!なあ!ブラザー!」

そう言ってレイの肩に手を回した。

ドリス
「彼女に鞄か?靴か?選ぶんだろ?ギャハハハハハハ!!」

レイ
「はぁ?!か...彼女?!」

ドリス
「あーいいの。いいの。この鞄見てみな。俺の自信作!!このゴレアリアで相当流行ってよぉー最高の出来栄えだと思わねぇか?」

クロエ
「あ、いや.....」

ドリス
「なんだあ!!彼女さんもかてぇのか!ギャハハハハハハ!で、どこまでやった?最後までやったのか?ギャハハハハハハ!」

レイは痺れを切らし回された腕を離して片手で顔面を掴むように口を覆った。

レイ
「お前、少し黙れ。いいな?」

ドリスは涙目でうんうんと頷いた。

ドリス
「わ、悪かったよ。」

レイ
「こいつにレザー一式の軽装備。クラスはアサシン。用意してくんねぇか。」

ドリス
「お客さん!お目が高ぇな!!」

クロエは店の中の鞄や靴、革のベストなど見回った。

クロエ
「へぇ、これ全部ドリスさんが作ったの?」

ドリス
「ドリスでいい。そうだ。全部俺が作った。見ての通りお前らのような冒険者用の服なんて一つもない。見てみろこの鞄。」

革で丁寧に装飾された鞄を手に取った。

ドリス
「お前らはこんなフリフリの鞄で遠足でも行こうってのか?ギャハハハハハハ。ここはお前らが来るようなところじゃねーんだよ。」

タバコを取り出し蒸しながら言った。

レイ
「こいつにオーダーメイドで作って欲しい。この国一番の防具屋でも無駄に鉄が付いて重たいそうだ。」

ドリス
「当たり前だろ?アサシンっていや....ほら!なんだ?まあ革で敵の攻撃当たれば即死さ。だから鉄のアーマーがいるんだろ?」

クロエ
「鉄なんていらない。当たらなければいい。だから全身革で私の防具を作って欲しい。」

レイはため息をし両手を広げ「だ、そうだ。」と訴えた。

ドリス
「なあ、取引をしよう。」

ドリスはタバコを灰皿に押しつけ火を消した。

クロエ
「取引?」

ドリス
「そうさ。お前らは冒険者だろ?いくらでも敵の革を剥ぎ取れるその革をここに持って来てくれ。んで、俺のお得意様となれ。安くオーダーメイドを作ってやる。どうだ?ん?お前らにもいい話だろ?」

ドリスはまたタバコに火をつけた。

クロエ
「でも....どうして?」

ドリス
「この通り街は寂れてる。中心街に全ての店は集うしな。皆そっちに流れていくんだよ!信じられるか?!今まで来てた客は全部取られちまった。クソッ!!」

クロエ
「材料は?」

ドリス
「警備も年々厳しくなってきてな。材料も手に入らねーんだよ。」


レイ
「悪くない話だな。」

ドリス
「なっ!なっ!話が分かる客でよかったよ!!ほら座んな!あっあんたは立って。」

そう言われるがままクロエは立った。

ドリス
「あー。ちょっと寸法測るからちょっといいか?」

クロエ
「う、うん。」

ドリスは目を閉じたままぎこちなく測りだした。

クロエ
「あ、私やるよ。」

ドリス
「おお!!やってくれんのかあ!嬉しいね!じゃあやってくれ!!」



ドリス
「じゃあありったけの革使ってクッソエロい防具作ってやっからよ!!じゃあな!!」

レイ
「おい、あいつ大丈夫かぁ?!」

クロエ
「さ、さあ?でもありがと!」

レイ
「なにが?」

クロエ
「気にかけてくれて!」

レイ
「お、おう。ほら、宿戻るぞー。」

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