BATEL
第4章 メルーン王国
小さな丸い窓には小さな小鳥がさえずり朝日が差し込んでクロエの顔に降り注いだ。

「ん...」

ガチャッ

ドアが開いてママがクロエが寝ているベッドに腰をかけた。

「おはよう。クロエ。」

クロエの髪を優しく撫でた。


「ママ、おはよう。」

いつも見るママの顔だ。でもどこか寂しく感じる表情だった。クロエは感じた。

「ママ?どうしたの?どこか痛いの?」

ママは撫でていた手をクロエの首に回し優しく抱きしめた。


「ママ?どうしたの?今日はメルーン王国行ける日だよ!どんな格好がいいかな?」


ママは少し震えていた。
流した涙を見せないように拭いいつものようにクロエの赤い髪をクシでとかした。

黄色いタンスから黒色のフリフリのワンピースを取り出した。胸には綺麗な赤い石が埋め込まれていた。
タンスには紺色、黒色のワンピースばかりだがこれはクロエの好きな色。

「靴は何がいいかな?黒のワンピースなら...黒のブーツだね!」

リビングに行くと慌ただしくパパがパンをかじりながらこう告げた。

「おはようクロエ。お前今日は大事な行事だから行儀よくしなさい。」

「分かってるよぉー」

パパはコーヒーを飲み干し、タバコに火をつけてくわえたまま裏庭の地下に繋がる研究所に向かった。

「ママ?パパなんであんなに急いでるの?研究所も家みたいなものなのに。」

「起きて何か閃いたみたいよ。さっクロエも朝食すませなさい。」

「レビィはー?」

「もう朝食すませて小川で魚とってるわよ」

クロエはいつものクッキーにホットミルクをつけて食べた。

「ママ?今日の体調は?」

「すごく調子がいいわよ!」

ここ最近急に咳が出始めて薬を飲む毎日が続いた。


レビィ
「ママー?メルーン王国の使者の人たちが来たよー」

レビィが魚が入った丸カゴを持ってきた。

使者
「本日行われるメルーン王国での適正検査の件でお伺い致しました。ここナーヴァ家にはお子様は2名様でよろしいですか?」

女性2人組で純白のフードで髪を覆い、全身は白をメインとした赤色で縦模様の綺麗な聖女姿の使者だった。

ママ
「はい。そうです。」

使者
「では30分後この近くのキール村の中心広場にお集まり下さい。」

そう言い残し使者は村の方へ向かった。


クロエ
「すごく綺麗な人たちだったね!」

レビィ
「純白の神エリザフィール様を信仰している王国だからな。使者も純白なんだろう。で、クロエ準備したか?」

クロエ
「できてるよー!」

レビィ
「じゃあママ行ってくるよ。どうせメルーン王国行くんだから何かいるもんあるか?」

ママ
「ないわ。クロエの事よろしくね。」

レビィ
「分かった。パパには夕方までには帰るって伝えて」

クロエはブーツの紐を強く縛り、ママに縫い作ってもらった茶色の革製リュックを背負ってレビィと家を出た。

キール村の広場には沢山の子供が溢れかえりそれを見送る保護者、そして王国の衛兵20人程度、馬車が3台が村の外で待機をしていた。

レビィ
「すげえ数だな。この村にこんな子供いたんだな。」

「よおクロエ!やっときたか!」

「あ、レイ。おはよう!なんかいかにも冒険者って感じの格好だね」

レイは身のこなしが良さそうな短パンに白のシャツにジャケットを羽織っていた。

レビィ
「レイじゃないか。久しぶりだな。元気そうだな。」

レイ
「だろー!元気だぞ!」

使者が先頭にマントをしている衛兵が2名を後に子供達の前で立った。

「お集まり頂きありがとうございます。本日はメルーン王国で適正検査が行われます。各自届いた封筒をお持ちの上確認された順に馬車にお乗り下さい」

レビィとクロエは衛兵に並び封筒を見せて3つある馬車の中心の馬車に案内され乗った。

レビィ
「俺ら馬車に乗るのは初めてだよなー」

クロエ
「ちょっと緊張するね!」

「おや、あなたたち馬車初めてですか?初めて乗る方は酔うかもしれませんからこの木の実あげますよ。」

クロエより少し年上で行儀が良いリザードマン族だった。

クロエ
「これくれるのー?ありがとう!これ食べればいいの?」

ミザロ
「うん。僕はガラリア一族のミザロです。商人の父がいて馬車は慣れてますから。」

レビィ
「俺はナーヴァ一族のレビィこっちは妹のクロエだ。よろしくな。」

クロエ
「変わった木の実だね〜見たことないよ。」

レビィ
「へぇ、クコの実じゃないか。この村では取れないからな。おやつとしてたまに輸入されるくらいじゃないか?そのヘタを取ってかじるんだ。」

ミザロ
「レビィさんもどうぞ。」

ひとつ皮袋からレビィに渡した。
レビィとクロエはヘタを外に捨て口に放り込んだ。

クロエ
「甘くて美味しい!」

ミザロ
「クコの実は酔い止めの作用もあるんですよ。」

キール村から出発し、左手に赤い小さな家が見えた。
クロエの家だ。
クロエの家にはママが見送りに家の前に立っていた。

クロエ
「ママだ。レビィ!ママだよ!ママー!行ってくるー!」

ママ
「気をつけてねー!!」

レビィ
「行ってくるー!」

クロエとレビィが見えなくなるまでママは見送った。

クロエの家からすぐに広いタナラ平原に出た。側にはタナラの森が広がっていた。
その森を眺めるように馬車に揺られながらクロエはレビィに言った。

クロエ
「レビィこの森にはママは入っちゃダメって言うけどどうしてだめなのー?」

レビィ
「魔物が棲んでいるんだ。」

クロエ
「魔物って悪い生き物なんだよね!」

ミザロ
「全て悪いという訳ではないんですよ。冒険者は魔物やドラゴンを狩り続けていますが死体がそこら中にあるはずです。でも無いんです。その死体を糧に生きている魔物も存在するのですよ。」

レビィ
「その死体が腐敗して臭いが凄いことになるからなぁ」

ミザロ
「そうなんです。この地を綺麗にしている魔物はこちらから危害を加えない限り何もしてこないのが多いらしいです。」

クロエ
「ミザロって物知りなんだね!凄い!」

ミザロは少し照れた様子でこう付け加えた。

ミザロ
「魔物も集団で行動したり言葉を真似て話す魔物も存在します。ただ知能は私たちよりは劣りますが」

レビィ
「おい。川が見えたぞ。」

タナラ平原の最終地点大きな川に大きな橋が見える。

レビィ
「地図でしか見たことない。これがミレ川か。すげぇなー。」

海のように地平線が見えそれでもなんとか泳ぎきれるだろう幅しかないミレ川にかかる大きな橋がメルーン橋だ。メルーン王国の大工士が50年かけてかけた橋にはメルーン王国の国家が飾られていた。
片側1車線の馬車が行き来できる程大きな橋だった。
橋を渡ると大きな街が見えてきた。メルーン王国だった。

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