メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
爽ちゃんの結婚祝いの時計を作ってくれる為に暖人が出した条件は、私も一緒に作る、ということだった。確かにその方が爽ちゃんも喜んでくれるに違いない。

「やっぱり電動の工具って苦手。」

イベントから帰って来て数日後、私は暖人の部屋に来ていた。家の庭に咲いていた秋桜を摘んで持ってきて彼の作業部屋に生け、その傍らで手厚い手ほどきを受けながら時計作りを進めた。

「電動なんだからあんなに力入れなくてただ動かせばいいんだけどな。ガッと開いて奥まで入れると安定してやりやすい。チビのお前でも楽々だよ。」

「工具が生きてるみたいで、暴走しそうで怖くてつい力入っちゃった。」

「映画の見過ぎ。うまくいった時は気持ち良かったろ?」

「うん。でも音がちょっと怖かった。」

「音はそんなに大きくないだろ。大きかったらマンションじゃ作業できないし。ま、そのうち慣れるだろ。」

「そうだといいな・・・コーヒー入れるね。買ってきたアイスクリーム食べようよ。フルーツが入っててすごく美味しそうなの。」

そう言って立ち上がり作業部屋の出口に向かいかけた私の体は暖人の方にぐいっと引き寄せられ、彼の膝の上に横座りする形になった。
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