メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「・・・。」

暖人は無言でこちらを見てくる。

「ん?」

「・・・いや、そんな憂いを含んだ表情もするんだなと思って・・・ハンドメイドは?好きなんだろ?」

彼はコーヒーの缶をベンチに置いて尋ねてきた。

「ハンドメイドはお母さんがやってるから一緒にやってるだけ。フラワーとかスノードームとかレジンとか手芸とか色々な分野のもの作ってるけど、これだ!っていうものがなくて全部中途半端だし、いつやめても構わない。その程度だよ。今回のイベントだって今はすごく楽しみだけど終わったら次はもうやらないかもしれない。」

「趣味なんだし、難しく考えないで適当に楽しめばいいんじゃないのか?」

「そうなんだけどね、『私には何もないな。』って思うの。」

私は視線を足元に落とした。

「時計一直線の暖人もそうだし、入りたい大学にまっしぐらで、その為に高校生活を捧げてた(さや)ちゃん───今度結婚する幼馴染みね───も眩しかった。私はただゆるゆるとその時興味があるものを適当に楽しんでいるだけの低温の毎日を送ってるから。本当は他のことが見えなくなるくらい、何かに熱くなってみたいんだ。」

ずっと胸にあったモヤモヤした気持ちを初めて取り出して人に見せた。恥ずかしさもあったけれど、少し心が晴れた気がした。
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