メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
暖簾(のれん)をくぐって廊下に出ると、涼しくて気持ちが良かった。

やっぱりここの露天風呂は素敵だ。浴槽の周りにたくさんの植物が置かれ、非日常感を楽しめる。お湯は少しぬるかったけれど空気が澄んでいて星が綺麗だった。

脱衣所の自動販売機で買ったフルーツ牛乳を持って休憩スペースを通り過ぎようとすると、暖人がソファに座ってコーヒー牛乳を飲んでいた。瓶を口から離してから、ふーっとため息をつく。

「あれ?もしかして待っててくれたの?」

「!?・・・んなわけないだろ。喉乾いて早く飲みたかったからここで飲んでるだけだ。」

彼は私の姿を見てハッとしたように言った。

「・・・足、平気か?い、いや別にどうでもいいんだけどさ。」

「うん。あったまって良くなった。」

海で私を抱き上げてくれた彼は部屋に入って私を下ろすと今度は大浴場までおぶってくれようとした。『大丈夫。』と言うと手を繋いでゆっくりと歩いてきてくれたのだ。

───どうしよう、かっこいい。

白い浴衣の湯上がり姿にドキドキしてしまう。洗いたてのサラサラの髪、首元や腕のごつごつした感じ───大人の男の色気っていうのだろうか。こんな風に男の人に目がいって、色気を感じて、それにときめくなんて初めてのことだ。

中庭が見える、おしゃれな間接照明が柔らかく照らす休憩所で彼が座る二人がけのソファの隣に座る。ホテルのシャンプーの香りがする。

「おおお前!隣に来るなよ!他のソファだって空いてるんだから他に座れ!」

「え?大学の図書館のベンチや新幹線でも隣に座ったよね。あとこのソファ二人がけだし、誰か来るかもしれないし。」

「遅い時間だからもう誰も来ねーよ・・・そういうことするやつはな・・・奪ってやる。」

突如、暖人の目に鋭い光が宿った。
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