メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
ガタッと音がして驚いて振り向くと杏花がテラスに出て来るところだった。

「おはよ・・・。」

「おお・・・。」

二人の間に流れる空気の温度と色が今までと明らかに違う。彼女の方は何も変わっていないのだから、こちらで恋心の存在を自覚しただけでこんなにも変わるのか。朝日に照らされた彼女はキラキラ輝く透明の海のようにとても綺麗でぼうっと見とれていると、『・・・よく寝れた?』と聞かれた。

「!?ま、まあな。昨日一日楽しかったけど疲れてたし・・・お前もよく寝てたな・・・あ、その、俺もぐっすり寝てたんだけどトイレで目が覚めて、洋室通らないとトイレ行けないし、それでお前見たらすやすや寝てたから・・・。」

しどろもどろになって嘘をついた。

「そっか。やっぱりそうだよね、その後ねぼけてベッドに・・・。」

「え?」

彼女の一人言は風の音にかき消されるような小さなもので聞き取ることが出来なかった。

「・・・ここ、東京より南にあるのにいつもの朝より寒いなぁって言ったの。」

「浴衣一枚で出てくるからだろ。そりゃ寒いよ。ほら。」

羽織を脱いで渡そうとすると『そんな。そしたら暖人が寒くなっちゃうでしょ。私も羽織持ってくる。』と部屋に戻ろうとする。その後ろ姿を見て俺は無意識に急いで羽織を着て彼女を追い、その手を掴んだ。

「!?」

驚く彼女を着ている羽織で後ろから包み込んだ。潮の香りと彼女が放つ砂糖のような香りが混ざり合って鼻腔をくすぐった。
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