ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-

朱鳥side

「はー、さすがに疲れた…」

「ふふ、お疲れ様。楓摩、ずっと泳ぎっぱなしだったもんね。」

足のつかないプールを怖がる柚月と、キッズプールを中心に遊ぶ望笑夏の見守りでほとんど足の着く深さのプールで遊んでいた私と逆に、葉月はずっと楓摩と泳ぎっぱなし。

楓摩は葉月の要求にこたえて、浮き輪を泳いで引っ張ったり、葉月の泳ぎの練習に付き合ったりしていた。

「何年ぶりに泳いだかな…、普段使わない筋肉ばっかり使ったから、明日筋肉痛になりそうだよ。」

「そうだよね。じゃあ、今日は温泉につかってゆっくり体休めなきゃ、だね。」

「うん。温泉、たのしみだなー」

子どもたちは、プールで遊び疲れたようで、ホテルに向かう車の中、ぐっすり眠っている。

普段あまり、家族で出かけることが多くないのも相まって、今日は朝からずっといつもよりテンションの高いみんなだったから、さすがに疲れたんだろうな、と微笑ましく感じた。

それと同時に心にこみ上げる、暖かい何かを感じて、つい口からこぼれた。

「なんかさ、夢に見た幸せな家族像って、これだろうなって感じる。」

「どうしたの、急に改まって。」

「ん?…なんかね、子どもたちの寝顔とか、こうやって楓摩と話す時間とか、本当に昔の自分じゃ想像もできなかったくらいに幸せでさ、ありがたいなあって思って。」

そういうと、楓摩は少し驚いた顔をした。

それから、今度はいつにも増して優しいほほえみを浮かべた。

「ありがたいのは、俺のほうこそだよ。俺こそ、幸せすぎるくらいの時間を朱鳥と子どもたちにもらってる。それに、朱鳥が頑張ってくれたから、今ここに子どもたちはいるわけだし、普段の生活も何一つ不自由なく送れてる。いつもありがとう。」
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