御曹司の恋の行方~和菓子王子編~
そして、悠里にとって初めての『長谷屋』。

悠里にはベリーヒルズビレッジ自体が敷居が高く、余り来る機会がない。裕福な家庭だが庶民的な方が落ち着く悠里は、遥の家に来る時と家族での食事位しか足を踏み入れる事がないのだ。

当然、和菓子王子も噂でしか聞いた事がない。

そして、『長谷屋』に足を踏み入れ驚く。

実演スペースに立つ着物姿の男性。アイドルかと思うくらい可愛い容姿に、スポットライトが当たっているかの様にキラキラ輝いて見える。

前は、人集りが出来ていて和菓子屋さんとは思えない。

悠里も他のお客様達の様に一瞬見とれてしまった。胸の奥から『ドキドキ』が止まらない。ハッと我に返り生菓子のショーケースに視線を戻す。

母が耳元で囁く。
「和菓子王子の人気凄いでしょう?」

悠里はコクリと頷く。そして、余り和菓子王子を意識しないように、ショーケースの中を見る。すると、和菓子王子にも驚いたが、中の和菓子に目を奪われる。

今までも、和菓子は見たり食べたりしてきたが、目を奪われるのは初めての経験だ。
繊細な和菓子は見ていて飽きない。
食べるのが勿体ないとさえ思う。
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