御曹司の恋の行方~和菓子王子編~
転機が訪れたのは、働き出して4年が経った頃だった…

いつものバーで、ふたりは待ち合わせをしていた。

先にカウンターに座っていた夕輝は、店に入って来た翔に気づいた。何故か難しい顔をしている。

「翔、お疲れ~」

「ああ…」

「翔、何かあったのか?」

「ああ…」返事は返って来るが、心ここにあらずな様子だ。

「翔?翔!」何度も呼ばれ、ハッと意識を夕輝に向けた。

「ああ、悪い…」

いつもとは違う翔に夕輝は戸惑う。

「本当に何があった?」

「ああ、ドイツに行くことになった」

「出張か?」

「いや。ドイツに支社と研究所があるんだが、大詰めを迎えている研究があって、それが実用化となったら、製造から販売までの指揮をとる人物が必要となる。世界レベルの販売網の話で、ドイツが拠点となるから俺が行くことになった」

「…。マジか。どれ位行くんだ?」

「わからん。何せまだ研究の最終結果も出てないからな」

「…」「…」お互い黙り込む。

お互いが初めて本当に離れる事に寂しさを感じる夜となった。

そして、あっという間に翔は日本を飛び立って行ったのだった…

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