バイバイ、ベリヒル 眠り姫を起こしに来た御曹司と駆け落ちしちゃいました
「じゃあ、『あなたの力だけで会社を大きくできたと思ってるのか』っておっしゃってたのは……」
「もう芝居は必要ないでしょうね」
奥様は私に顔を寄せて、耳元でささやいた。
「男を操る一番の方法はね、焚きつけること。あなたたちが一緒になるには、家を出るしかなかったんだもの。ちょっとやりすぎだったかもしれないけど、あの子に恨まれるくらいでちょうどいいのよ。血のつながりがなくたって、あの子の幸せのためなら、どんな悪女にでもなれますよ。わたくしね、これでも女優やってるのよ」
ゆっくりと立ち上がって、奥様がまた頭を下げた。
「生まれたら、孝一郎さんにも見せてやりに来てくださいね」
「はい、おかあさん」
目尻を下げながらお母さんが首をかしげる。
「本当にうちの息子でいいの?」
「はい!」
私は自信を持って答えた。
「私、徹也さんが大好きですから」
楠の葉を揺らして爽やかな風が吹き抜けていく。
住宅街の屋根の向こう、はるか遠くにベリーヒルズビレッジの高層タワーが見える。
こちらからは見えるけれど、向こうからここにいる私たちは見えないだろう。
だけど、私たちはここにいる。
二人、手を取り合って、寄り添って生きていく。
徹也さんと一緒なら、どこにいたって私たちは幸せなのだから。
(完)
「もう芝居は必要ないでしょうね」
奥様は私に顔を寄せて、耳元でささやいた。
「男を操る一番の方法はね、焚きつけること。あなたたちが一緒になるには、家を出るしかなかったんだもの。ちょっとやりすぎだったかもしれないけど、あの子に恨まれるくらいでちょうどいいのよ。血のつながりがなくたって、あの子の幸せのためなら、どんな悪女にでもなれますよ。わたくしね、これでも女優やってるのよ」
ゆっくりと立ち上がって、奥様がまた頭を下げた。
「生まれたら、孝一郎さんにも見せてやりに来てくださいね」
「はい、おかあさん」
目尻を下げながらお母さんが首をかしげる。
「本当にうちの息子でいいの?」
「はい!」
私は自信を持って答えた。
「私、徹也さんが大好きですから」
楠の葉を揺らして爽やかな風が吹き抜けていく。
住宅街の屋根の向こう、はるか遠くにベリーヒルズビレッジの高層タワーが見える。
こちらからは見えるけれど、向こうからここにいる私たちは見えないだろう。
だけど、私たちはここにいる。
二人、手を取り合って、寄り添って生きていく。
徹也さんと一緒なら、どこにいたって私たちは幸せなのだから。
(完)


