俺様めちゃモテイケメンが一人にはまったら。

祐世side37

妻となった美月に『行ってらっしゃい』と見送られ出かけた。

部長クラス以上の役員が参拝を済ませ昼食をともに取るのが有知商事の新年の始まりだ。俺はまだ役職的には平社員扱いだが去年から天と共に出席している。


「祐世さん、新年おめでとうございます。」

「おめでとうございます。」


近くに居合わせた方たちと新年の挨拶をしているとその中の一人が『そう言えば、祐世さん婚約したらしいですね。新年と共に二重の喜びですね。』と。


「ありがとうございます。でも婚約ではなく結婚ですよ。昨日籍を入れてきました。」


話をしていた者の他、聞き耳を立てながら近くにいた者も『えっ。』と一同驚きを隠せないようだった。
みんな仁見さんと婚約したと思っているのであろう。


「そうなんですか。いやー、知りませんでした。もうそんな所まで話が進んでいたとは。」


勘違いしているとわかってはいたが話にのってみた。


「ええ、十二月に入って両親に話をしたら式の前に入籍したら?と言われまして。」

「それは、おめでとうございます。」


この企画部の部長はアルクフードとの提携に否定的だった人物。
隠しているつもりだろうが苦い顔をしている。
その横からアルクフード押しの常務がニコニコと近寄ってきた。


「いや、年度末に仁見さんが泣きながら早退したと聞いたので心配してたんですが、いやー良かった良かった。これで社長も安心でしょう。」

「はっ?仁見さんが無断早退した事と何か関係ありました?」

「えっ、今入籍されたと・・・。」

「はい。昨日入籍しましたよ。五年前からお付き合いしている女性と。」

「仁見さんではないのか?いや、でも社長は・・・。」


常務の驚きの上をいくものはいないが皆一様に『どう言う事だ?じゃあ誰と。』とざわつき出した。


「あー、社長は仁見さんと縁を持たせたかったようですが、私には先ほど話した通り長年付き合っている彼女がいますんで早々にお断りしましたよ。まあ、なかなか仁見さんには諦めてもらえませんでしたが。なので家族とも話した結果、二三年後に結婚を考えているのなら少し早いが結婚してもいいんじゃないかって話になりまして。」


一気にたたみかけると周りはシンと静まりかえった。
『あのー、じゃあお相手は?』企画部長がポツリと問いかけてきた。


「ああ、知ってる方もいるかと思いますが秘書課の折原美月さんです。言っておきますけど美月は縁故入社じゃないですから。ねっ、人事部長?」


急に話を振られビクリと肩を震わせていたが『はい。一般のインターンからの採用ですね。』と答えてくれた。
それでも疑うものはいる。
どこをどう調べても美月が自分の力で勝ち取った採用権としか出ない、それに美月の仕事の優秀さを見れば分かるだろう。俺の電撃結婚でざわつく中『新年パーティーに行かなければならないので、お先に失礼します。』と会場を後にした。



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