幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
「ふぎゃあ」


突然、頭をぐじゃぐじゃにされてあたしは煮られた猫みたいな声を上げた。


「ちょ、白川先輩！髪が」


「金森だけに背負わせるわけないだろう」


「こんなの見ちゃったら無視する方が難しいでしょうね」


「どうせ夏イベ捨てるつもりだったし」


頭の上に増えていく温かい手。


あたしは前髪の隙間から、それを見上げる。


「みんな……


もうちょい励まし方ってもんがあるでしょうが！いやぁ、あたしのくせっ毛がぁぁ！しかも藤原！それ塩触った手！」


朝一生懸命セットしたのに！


これだからくせっ毛の努力を知らない人間は！


てか塩まみれの手とか嫌がらせでしょ！


あたしは3人の腕を精一杯跳ね除ける（あろうことか彼らは全力で抵抗してきた）。


すると、そばでくすくすと笑い声が聞こえた。


あたしたちはぴたりと動きを止めて、声の方を振り返る。


「生徒会の人たちって仲がいいんだ。演劇部は今ピリピリしちゃってるから羨ましい」


「いや、仲がいいっていうか、こうやって捌け口にされてるっていうか……」


「……もうだめだと思った。こんな呪いを目の当たりにして、力を貸してくれるはずないって。ありがとう……本当に、ありがとう」


岩橋さんは目に大粒の涙を浮かべて、両手で顔を覆った。


美保さんがその肩をそっと手を置いて、宥めるように撫でる。


その縮こまった肩がなんだかひどく儚げで、あたしは立ち上がって、美保さんと同じく肩に手を置いた。


「必ず、演劇部をまた笑える場所にしましょう」


岩橋さんは細い肩を揺らして、下を向いた頭を小さく縦に振った。
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