幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
渋々席を立って生徒会室のドアを開けると、むわっと湿気を含んだ空気が首筋を撫でた。


生徒会室がキンキンに冷えていただけに、あたしは思わず顔を歪める。


「うへぇ」


「はるちゃん、早くドア閉めて。暑い」


美保さんからの追撃。


やだやだ、早く終わらせちゃおう。


あたしはドアを閉めて、生徒会室の前に並べてある机の上に乗ったA4のノートサイズの目安箱を手に取る。


目安箱と言っても、あくまで形式的なもので、今までに入っていたものといえば、落書きやら落し物やらはたまた藤原へのラブレターやら、用途を誤解したものばっかりだった。


「どうせ今回も……って、あれ?」


指先に当たる紙の感触。


あたしは目安箱の底からそれを引っ張り上げてみる。


「ルーズリーフ?」


しかもご丁寧に折り畳まれている。


開けてみると、紙の中央に一言だけ。


「演劇部の部室が呪われています。助けて下さい。……んんん?」


「もしかして入ってた?」


生徒会室の窓から首だけ出した白川先輩があたしの手元を伺う。


でもそこからじゃ、きっとこの細い文字は読めない。


「なんか、よく分からなくて」


「取り敢えず中戻ってきて。暑い」


……暑いは命令の文末用法か。


そう思いつつも、あたしの体は納涼を求めていて、そこは欲に忠実に従うことにした。
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