ラグジュアリーシンデレラ
何を言ってくるのだと思ったら、そんな事か。

「私は、林人さんを愛しています。別れられません。」

「結野。」

ソファーに座る林人さんは、私に手を伸ばした。

私はその手を取る。

ぎゅっと握り締めた手は、もう離さない。


「君は、我々と林人君との関係を知っているのか。」

「はい。まだこの会社を立ち上げた頃、随分お世話になったと聞きました。」

「世話してやったばかりじゃない。金まで投資したんだ。」

私と林人さんは、手を放した。

「朝倉社長。その御恩は今も忘れてはいません。」

「いや、忘れているだろう。娘との婚約を解消するなんて。」

私と林人さんは、下を向いた。


「約束しただろう、林人君。お嬢さんは、俺が幸せにすると。」

「その時は、そのつもりでした。でも、今は違います。」

その時林人さんの視線を感じて、私は顔を見合わせた。

そうだ。私だけじゃない。

林人さんだって、私を必要としてくれている。
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