ラグジュアリーシンデレラ
そして驚く事に、りずさんは社長のスケジュールも詳しかった。

「さてと、これで社長の決済が下りれば……」

留美子さんが丸一日かけて作った書類を、震える右手で上げた。

「残念ね。井出社長は、今日と明日出張よ。」

それを切り捨てるかのように、りずさんが答える。

「何で、りずさんが社長の出張なんて、知ってるのよ。」

「基本的な事は、全て知っています。」

りずさんは、そう言って秒単位で、電話の応対をする。


「結野さんは、社長の出張、知ってるの?」

「知らないです。いつも事後報告なので。」

次から次へと仕事をこなすりずさんに、留美子さんはため息をつく。

「彼女、もうこの会社には、なくてはならない人材になりつつあるわよ。」

「えっ!さすが。」

「負けてられないわよ、結野さん。」

留美子さんに、背中を叩かれた。


負けていられない。

それは、私の意気込みの方で。

私も早く、この会社になくてはならない人材にならないとと思った。
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