密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

 ほとんど確信に近いものを抱いて問いかけると、玲士がようやく口を開く。

『雛子、きみは誤解している』
「なにが誤解だって言うのよ」
『今きみが言ったこと、全部だ。……電話じゃまどろっこしいな。近いうちに会えないか? そうだな、次の日曜とか』

 次の日曜……。スプリング・デイは定休日だが、あいにく外せない予定がある。

「その日はダメ。兄に煌人を預けて、クリスマスプレゼントを買いに行くつもりなの」
『なるほど。なら俺も付き合おう』
「えっ」

 な、なんでそうなるの?

 戸惑う私を無視して、玲士は勝手に話を進める。

『その後、煌人やお兄さんと合流して食事でもどうだ? 煌人の好きなものを教えてくれば店を予約する』
「ちょ、ちょっと待って! いきなり知らない男の人と食事するなんて、煌人が戸惑うでしょう!」
『知らなくはないだろう。一度歯ブラシの件で顔を合わせたんだから』
「もう、それがまたややこしいのよ……!」

 歯ブラシをくれた男性が玲士だなんて思いもよらなかったから、煌人には『誘拐犯かもしれない』と説明してあるのだ。そのうえ、しょんぼりさせるほどに叱ってしまった。

 その人が実はあなたのパパでした、なんて、とうてい笑えないジョークだ。

< 35 / 175 >

この作品をシェア

pagetop