アイツの溺愛には敵わない

吉田くんがやってくる直前。


『はーちゃん、もしかして……』


私の顔を覗き込んで口にした、あの言葉の続きは……


「ひょっとして、私が幼なじみと彼女でどんな風に変化をつければいいのか悩んでたことに気付いてたの?」


「何となくだけどね。はーちゃん、眉間にシワ寄せて難しい顔していたし、“彼女らしさ”って小声で呟いていたから。そうなのかなって」


私ってば無意識のうちにそんなこと言ってたのか。


心の声が部分的に筒抜けだったなんて恥ずかしい。


頬に熱が集まるのを感じた。


「幼なじみだけの関係じゃなくなったし、今までと同じっていうのも違う気がするんだけど…」


「いいよ、そのままで。彼女らしく…じゃなくて、はーちゃんらしく。肩肘張らずに俺の傍にいて?」


ポンポンと頭を撫でる颯己。


優しい言葉と笑顔に頷いた。


彼女っていう言葉にプレッシャーみたいなものを感じていたけど、心が少し軽くなった気がする。


変化を求めて無理に背伸びしても、きっと疲れちゃうもんね……。


今までと変わらず、私らしく。


颯己の隣を歩いていこう。


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