アイツの溺愛には敵わない
「おはよ~、真浦くん」
「颯己くん、おはようっ!」
クラスの女の子たちが、ニコニコしながら駆け寄っていく。
でも、颯己は無表情。
「…おはよ」
一応、挨拶は返すものの鬱陶しいと言わんばかりの素っ気ない声だ。
「今日も今日とてクールだね、真浦くん。女の子たちから黄色い声を浴びても表情ひとつ変えないんだから」
「うん」
耳元で囁く綾芽ちゃんに頷いた。
颯己はかなりモテる。
端正な顔立ちでスタイルもいいから、入学式初日から女の子たちの注目の的だった。
おまけに勉強もスポーツも得意だから、完璧王子なんて呼ぶ人もいる。
せっかく女の子たちが話しかけてくれてるんだから、もっと愛想よく振る舞えばいいのに。
家では普通に笑ったりするじゃん。
感じ悪いヤツ。
不快オーラを全面に出しながら席に着く颯己に、私は眉をひそめた。