MATSUのごくありふれた平凡な日々
9.
*
美紀と暁が退職届を出した。
その噂が朝一で会社内に駆け巡り、若手女子社員が営業部へ走りこんでいく。
松も階段で秘書室階へと駆け上がった。
「そんなに急いで、どこ行くんですか?」
秘書室階のフロアには、休憩するためのソファーや自販機が置いてあるスペースがある。
声がして、その自販機の陰から暁が姿を現した。
「あ、え、なんでこんなところにいるのよ」
「これ買いに」
手にしていた缶コーヒーをちょっと上げた。
なるほど。
そのまま立ち去るのもなんで、松は少し躊躇した。