MATSUのごくありふれた平凡な日々

「名字」

松は弱々しい声で指摘すると、くるりと背を向けて駆け出した。

階段を飛ぶようにして降りる。

段がぼやけて見えるのは気のせいだ。

経理部に入る前に大きく深呼吸をして、トイレから帰ってきた風を装って、自分の席につく。

なんでもない、なんでもない。

いつもの呪文を胸の中で唱える。

ぎゅっと目を閉じてから、一つ息をし、そして書類を手にした。

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