綾川くんが君臨する

「呼び出し受けて全力疾走でやってくる黒鐘、何回見ても飽きない」


そう、綾川星くんは、こういうニンゲンなのである。


「きつかった? つかれた? 息切らしちゃって、可ー愛い」


性格が歪みに歪んだ、さいあくな男の子なのである!



「おれは、お前のその情けない姿を見たいがために学校に来てるのかも」

「あは、あはは、それはご苦労なことで……」



諦めの笑いがこぼれる落ちる。

毎回こうなるとわかっていながら、好きだから体が勝手に従っちゃうんだよね……。



「労ってあげるからおいで、イノシシちゃん」

「い、イノシシチャン……?」


「何かをめがけて懸命に走る姿はワンコみたいだな、と思ったんだけど」

「……だけど?」


「ワンコみたいにお利口じゃないし、溢れんばかりの愛嬌があるわけでもないし、脇目も振らずこちらに向かってくる様は、イノシシだなーと」



はあ、とがっくり肩を落とす。

いちいち怒ってたらきりがない。日が暮れちゃう。
< 2 / 72 >

この作品をシェア

pagetop