急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

コーヒーを買いに来たと言いながら、若様は何も買わずに、亜里砂からコーヒーが乗った紙トレイをさっと奪った。
周囲の視線は、そんな二人に釘付けだ。
若様は「変わったことはないか?」と亜里砂に尋ねた後、どうでもいい話をしながら亜里砂を八階のベリーマリアージュサービスのオフィス前まで送り届けた。
「じゃあな」と言いトレイを返すと、亜里砂を残して颯爽と去って行く。

「いったい何だったの?『俺の一分がいったい幾らすると思ってるんだ!』じゃなかったのかしら…」
そんな大也に、亜里砂はキョトンとするばかりだった。


さらに翌日の夜には…。

「また!こんなとこで何してるんですか…!」

「視察だ…」

ライトアップされたベリーモール屋上庭園でのお見合いパーティーを無事に終え、タワーのオフィスに戻ろうとした連絡通路。

伊達メガネを装着し、いつもの鼠色の装備で、タブレットと小道具が入った箱を持ち、隅っこを歩く亜里砂の目の前になぜかまた…通路のポールに凭れて佇む若様がいた…。

若様は亜里砂に気づき、嬉しそうに微笑みながら歩み寄ってくると、亜里砂の腕から荷物を奪い、凛々しい眉を少し寄せて、亜里砂に心配気に問うてくる。

「何も異常はないか?」

(まさか、私を警備員か何かだと勘違いしているの?)
と亜里砂は思ったが、おとなしく答える。

「何も異常は無いですよ」

「なら良い」

若様はどこか安心したように言うと、あとは暢気に世間話などをしながら、なぜか亜里砂をまた八階のオフィス前まで送ってくれる。

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