急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

(正直、池澤を一護の監視下に置いてもらえるのなら安心だわ。でもまた若様に迷惑をかけちゃうことになってしまうのは心苦しい…)

亜里砂が僅かに眉根を寄せると、今度は大也が美幸の手をはたき落とし、また亜里砂の頭を撫で始めた。

(環さんが言ってた順繰りって、こういうことだったのね…。本当に禿げちゃったらどうしよう)


「ところで亜里砂。隠れて見守るというのは、どうにも俺の性に合わないことが、今回のことでよくわかったんだ…」

「?」

大也のどこか不満げな声に、亜里砂がパチリと目を開く。

「今回のように後手に回るのはもうたくさんだ」

「?」

「守ると決めたのなら、俺はとことん守りたいんだ。夜も、あんなセキュリティの薄いマンションに、亜里砂を一人で帰すのは心配で堪らなかった。
そこで…ものは相談なんだが…ここを退院したら俺の家にこないか?」

「⁉︎」

「俺の家で、俺と一緒に住もう。
ベリーのレジデンスならセキュリティも固いし、退院した後、もし何かあっても、ここの医師がすぐに往診に来てくれるから安心だ」

(ここの医師ということは、ここはベリーヒルズ総合病院だったのね…。そして私は入院中なんだ…)
遅ればせながら、ようやく状況が判明した。

「動けるようになるまでは、勿論俺もみるが、一護の使用人を何人か呼んで、お前の面倒を何不自由無いように全面的にみさせよう。体が治って仕事を再開するにしても、今より通勤は確実に楽になるし、地下通路を使えば、誰にも会わないからより安心できる。
それに何より…俺は…亜里砂と少しの時間でも一緒にいたいんだ…」

(一緒に…)

「知っての通り、俺は忙しい。これまではどうにか時間をやりくりして僅かの間、お前に会いに行っていたが…それじゃ、全く足りない。
俺はもっと多くの時間、亜里砂に会いたい。そのためには一緒に暮らすのが最善だと思わないか?」

(若様と一緒に暮らす…)

「正直、必要とも思わなかったから、俺が家に帰る時間はこれまで多くなかった。タワーの執務室の横には仮眠室もあるからな…。レジデンスに家を持っていても、そこに帰ったのは、二年間で数えるほどしか無いんだ。だが亜里砂がそこに居てくれるのなら、俺は毎日家に帰りたくなると思う…」

(若様と…一緒に…)
亜里砂の胸の鼓動がドクンドクンと高まる。


「ちょっと若様!どさくさに紛れて嫁入り前の大事なあーちゃんに、何を言ってるんですか⁉︎ベリーレジデンスなら、うちも部屋を持っているわ。私が預かればいい話でしょう!」

美幸が目を剥いて言う。

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