急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!
若様の花嫁

◇◇◇◇

ベリーヒルズ総合病院。

特別室専用の、一際ゴージャスなエレベーターが、チンと軽やかな音を立てて止まる。

中から二人の美男美女が降りてきて、ピカピカに磨き上げられた廊下を、やがてどちらからともなく手を繋ぎ、歩き出した。

特に男性の方は、街で出会えば百人中百人が二度見するほどの、滅多に見られない美丈夫だ。
その身から発するオーラも半端ない。


「うー〜、やっぱり緊張する」

「なんでだ?いつかも二人で来た道だろう」

「あの時と今とでは、気持ちが全く違います!」

(そう…あの夜は若様に問答無用で手首を掴まれて、ここまで無理矢理引っ張ってこられたんだもの)

「そうか?俺は、あの日も今日も、是が非にもお前と結婚するという気持ちに、全く違いはないけど?」

大也がフフンと笑う。

「もう!」

「ふっ、まあ…そうだ、気持ちは違うな」

大也が繋いだ手をグィッと引き寄せ、亜里砂の腰に腕を回しながら抱きしめた。

「今は、俺がこんなにも亜里砂のことを愛しているからな」

チュッ…

大也がわざとリップ音をたてて亜里砂の額にキスをする。

「私も……って、若様、ここ病院ですよ!どさくさに紛れて、なんでこんな不埒なことをしてるんですか!公の距離じゃありません。近過ぎます」

亜里砂が真っ赤になり、大也の腕から逃れようともがくが、大也はニヤリと笑い、離さない。
どころかさらに引き寄せ、もっと深いキスをしてやろうという顔だ。


「もーーう!ダメ!どれだけ自由なんですか!
と…ところで…若様!私、ずっと訊きたかったことがあるんですが…」

亜里砂は迫ってくる大也の美麗な唇を、両手で塞いでグイッと押しやり、どうにか大也の気を逸らして離れようとした。

「なんであの日、あの時、若様は私の居場所がわかったんですか?
いいえ、あの時だけじゃないわ。考えてみれば…いつも若様は、私の居場所がわかっているかのように、ベリーヒルズの其処此処に現れましたよね…」

「そんなの……偶然だ、偶然」

亜里砂を抱きしめたまま、大也の目が途端に泳ぎだした。

「嘘!エレベーターが点検中だったとしても、あのタイミングで若様がわざわざ六十階から八階の階段室まで、非常階段を駆け降りてくる偶然なんて、絶対にないでしょう!しかも警備員さん達もすぐに来たし!
病室で『陰で見守るのは性に合わない』って言ってましたけど、それっていったいどういうことなんですか?」

「……」

亜里砂が「話してくれるまで動きませんからねぇ!」と大也を睨むと、大也は観念したように話し始めた。


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