急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

「… 名といえば…父さんが祖父さんへの当てつけで、俺の名に『金』の字を入れなかったって、前に聞いたことがあるけど…」

子供の頃からずっと酷く気にかかっていた事なのであろうに、大也は取り立てて何でもないことのように、金持にさらりと切り出した。


「いや…それは違うぞ。誰じゃ、そんな馬鹿な事を言うた奴は。
金吾はあの時、何と言っておったか。三十年以上も前のことじゃからの……。あぁ…そうそう、『金の字を入れた名はダサい』」

「…はぁ⁉︎」

「確かそう言うておったぞ」

「じゃあ、カナ(金)や、他の異父母弟妹はどうなんだ!みんな『金』の字の入った名じゃないか!」

「そんなことは儂は知らんよ。でも確かに金吾はそう言うた。まあ確かに代々の一護の直系には名に『金』の字が付くことが多いが…全てがそうというわけではない。『大也』はいい名じゃと思うぞ。金吾が過去にした中で一番良い仕事じゃ。
そもそも曾祖父さんがつけた儂の名の『金持』は、あまりにもあからさまでセンスが無いとは思わんか?今でこそ歳をとって箔がついたから良いものの、若い頃は随分恥ずかしい思いをしたものじゃて。
カナちゃんも、『金』の字が恥ずかしうて、普段は片仮名で名乗っておろうが。なんじゃ?お前も『金』がついた方が良かったのか?
ダサいらしいからやめておけ。既に金ならあり余る程持っておろうが」

「いや…そうだけど…そうか…『ダサい』か…。言われれば確かに。なんだ…そんなことだったのか…。ハハッ!」

大也はようやく声を上げて屈託無く笑った。

「こんなことならもっと早く聞いてみれば良かったな…」

「そうですね」

晴々とした顔をする大也を見上げ、亜里砂も満面の笑みだ。

「お父様やお母様が、若様を『無視』していたように見えたのは、決してお祖父様や、ましてや若様を恨んでいたわけではなくて、手放してしまった息子に対する想いが…少しでも接してしまったら溢れてしまうから、ではないでしょうか。
お祖父様に預けた以上、経営に向いていないご自分達が若様に関わってしまったら、足を引っ張ってしまうことになるのではないかと心配されて…。
勿論、これは全部私の推論でしかありません。
ですが…子は、思うより親の思想や思考や言動に左右されるものなのです。
もしも若様のご両親が、お祖父様をいつまでも恨んでいたり、手放した若様を疎ましく思っていたのなら、若様の異父母弟妹の方達が、揃って若様を助けるお仕事に就く筈が無いと思うんです。
私はまだ山藤さんとしかお会いしたことはないですが、彼女からは若様に対する『信頼』や『思慕』や『思いやり』ばかりが感じられますよ」

「違いますか?」と見上げて問う亜里砂に、大也はゆっくりと首を横に振った。

「いいや…違わない」

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