急募!ベリーの若様が花嫁を御所望です!

ガチャっ…

扉が開く音がして、亜里砂は端末に打ち込む手を止めゆっくり顔を上げた。

ベリー・マリアージュ・サービスでは…基本的に…お客様と連絡を取り合うのは、メールや電話でのやり取りとなっており、お会いするのもベリーヒルズビレッジ内のどこかをお互い指定して会う事になっている。
そのため通常このオフィスに、社員以外が立ち入ることはない。

当然、松浦か北柴が帰ってきたと思い「お疲れ様です」と暢気に言いながら振り向いた亜里砂の目に飛び込んだのは…亜里砂が見たことのない男性の姿だった…。

その男は…室内を見渡し、唯一そこに居る亜里砂に目を止めると、低めの…声優か何かじゃないかと疑う程の、耳に心地良い声を発した。

「ベリー・マリアージュ・サービスはここで合っているか?」

「…っ!」

感情が顔に出にくく、過去のトラウマから男なんて要らない!と常日頃から思っている亜里砂が、暫し見惚れて言葉を失ってしまうほど…。

その見知らぬ男…。

身長は185㎝を超えているだろう。
明らかにジムか何かで鍛えられているように見える、無駄の無い均整のとれた体軀で…見るからに上質な生地で仕立てられたスーツを、さらりと上品に着こなしている。
顔は小さく、きりりと意志の強そうな黒い眉と、眼光鋭い黒曜石のような瞳…すぅっと高い鼻梁に、形の良い唇が、絶妙のバランスで配置されている。
浅黒い肌はきめ細かく、この時間にして髭の剃り跡なども皆無だった。

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