ご縁婚  お見合い結婚のはずですが、溺愛されています?
雅貴さんの出張を聞きつけた浩一郎さんと日奈子さんに、私は雅貴さんが戻るまで実家に戻ることになった。
自宅でも別に変わりないと思うのに、過保護な二人はひとりで何かあったら大変だからと。
確かに、何をするにもスローになった臨月の妊婦なのでお言葉に甘えることにした。


「ごめんね、お母さん。甘えちゃって」

「何言ってるのよ。娘がこの時期に一人なんて近くたって心配だから、目の前にいてくれた方が安心よ」

さすが、自分も出産経験のあるお母さん。
私もお母さんと一緒に過ごせるのは安心だ。

すぐ隣には自分の主治医の希代美さんも居ることだし、二重の安心感。

ご飯もお風呂も洗濯もお母さん任せで申し訳ないけれど、すっごくゆっくりさせて貰えてありがたい。

「赤ちゃんが産まれたらこんなゆっくり出来ないのよ。ぜーんぶ赤ちゃん中心になってしまうんだから。この期間は出産前最後の休暇と思ってゆっくりしなさい」

経験者の言葉は実感あってこそだから、そこは甘えてしまった。


そうして、実家でのんびり過ごして今日の夕方には雅貴さんも戻るというこの日。

お昼ご飯の後から何となく違和感はあった。

腰が重だるくって、ちょっとお腹がたまに痛む感じ。

でも、一時間に二回くらいだからお腹もパンパンだしこんなこともあるかと思っていた。

お母さんとおやつにお茶とクッキーを食べて、よっこらトイレでもと立ち上がるとパチンという音がしてサーッと股から尿もれ所ではない水が滴ってしまった。

え?なんで?と思ってる間に今度は一気に今までの違和感どころでは無い痛みに襲われて息が詰まった。

「くっ……」

お腹を抑えつつ立ったと思ったのに座り込んだ私にお母さんは駆け寄ってきた。

「茉奈花!あら、破水してるじゃない希代美さんに連絡入れて浩太郎呼ぶわね!」
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