麗しの彼は、妻に恋をする

短い秋は瞬く間に過ぎた、十一月のある日。

『登り窯に火を入れるぞ』

芳生から、そう連絡があった。

パーティで見かけたあの日から二か月以上、今日までお互いに連絡を取っていない。

あの日芳生は、和葵と一緒にいる女性が柚希だと気づいたのか。それとも気づかないままただ見ていただけなのか。それ以前に会場のどのあたりに彼はいたのか。

あの後どんなに考えても、柚希にはわからなかった。

和葵と一緒にいた時は女性たちに囲まれていたし、夏目と一緒にいた時は男性に囲まれていて、落ち着いて周りを見る余裕もなかった。

聞かれた場合、どうしたらいいのか。
それとも先に自分から言っておくべきか。

悩んだ挙句もうどうでもいいと開き直った気分で、柚希は芳生のところに行った。
その時に答えを出せばいい。

軽トラック止めて、荷台の荷物を下ろしていると、芳生が現れた。

「差し入れ持ってきましたよー」

「サンキュー。作品は? 三つでいいのか?」

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