麗しの彼は、妻に恋をする
ローボードの上に飾られたフォトフレーム。

A4サイズはあるだろうその写真に写っているのは、美しい花婿と花嫁。

「すごい。別人みたい」

「うんうん。誰と結婚したんだっけって思ったよ」

――え。
彼は、無駄に正直だ。

「ん?」

「い、いえ別に」

そこはお世辞でも否定するところじゃないんですか、と言いたいところだったけれど、自分でもそう思うのだから仕方がない。

フレームの中で花のように微笑んでいる新郎は彼、冬木和葵。
その隣で恥ずかしそうな笑みを浮かべる花嫁、柚希。

彼のほうはどうみても彼そのものなのに、柚希は見たこともないような美人になっている。
その変身ぶりは、和葵が招いた凄腕の美容師によるマジックのおかげであるが、ここまで違ってくると、他人の写真を見ているようである。

そもそも結婚して記念撮影をしたこと自体が信じられないようなことなので、全て夢だったような気がした。

柚希は頬を軽くつねってみる。
――痛い。

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