過保護な君の言うとおり
私は眩しい夕焼けからまた男に視線を戻し、口を開いた。
「救急車、呼んでくれて助かった。……ありがとう」
「ううん全然気にしないでよ、君が無事でよかった。
……あ、そうだ。
名前まだ言ってなかったよね、僕は佐久間 優と言います」
手を膝の上に揃えてかしこまった男は何故か耳を赤くしていた。
「えっと。宮代 玲さんだよね?」
「なんで……って。ああ、病室のプレートか。あそこに名前書いてあったもんな」
「別にそれがなくても知ってたよ。玲ちゃん学校で有名だから」
さっきの今で『玲ちゃん』って。距離詰めるのいくらなんでも早すぎだろ。ていうかなんだよ有名って。
「学校では玲ちゃんのことみんなネコちゃんって呼んでるよ」
佐久間はちょっと笑った後、これって本人に言っても大丈夫だよね、と眉をひそめながら呟いた。
「なんでそんな気持ち悪い呼び方されてんだよ、胸糞悪い」
「でも僕は言い当て妙だと思うけど。本当に玲ちゃんってネコみたいだし、ほら、なんか言動がさ。……あ、そうだった」
佐久間は何かを思い出したように持っていた袋を私に渡した。