北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅱ 『溺愛プロポーズ』
 凛乃の言うシチュエーションを想像して、ジャージを履き終えた累は素直にうなずいた。
「遅くなるかもしれないから、つるにこのごはん用意してくる」
「あ、裏返しだ」
 ベッドの下に隠れるようにして、カナリアイエローのキャミソールが中空でひっくりかえされる。
「ごめん、まちがえた」
 パンツはずっと凛乃の足首にアンクレットみたいにまとわりついていたから迷わなかったけど、基本、女性ものの下着はよくよく触らないと裏表がわからない。
「それはいいから。玄関で合流ね」
 凛乃はロングTシャツの襟から髪を跳ね出しながら、累をドアの先へ押し出すように言った。
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