独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
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葵と須和は誰もいないプールに入り、程よい水温を肌に感じていた。

「やっぱりシンガポールは暖かいね。日本じゃ絶対こんなこと無理だ」

「ふふっ、そうだね」


葵の後ろに回り、須和はギュッと抱きしめる。
直に互いの体温が触れ合って、じりじりと熱を帯びてくる。


「みんな私たちが結婚するって知ったら、ビックリするだろうなぁ」

どこか不安げな顔を浮かべた葵の頬に須和は口づけを落とす。

「ねぇ、なんで葵は僕と付き合ってること言おうとしなかったの?」

「……そ、れは……柾さんはすごい人で、自分なんてまだまだだと思ったし」

顔を赤らめて言う葵は、本当にそう思っていたらしかった。
須和が思っている以上に、葵は自分のすごさに気づいていないらしい。

「そういう柾さんも、言おうとしてなかったでしょ……」

少しだけ悲しそうな眼差しを向けた葵に、須和は微笑んだ。

「僕だって言いたくて仕方なかったんだけどね……僕たちの邪魔をするやつらに知られたら面倒だろ?」

「?」



葵は何も知らない。

須和の三年間の働きによって、羽柴が刑務所に入っていることも。
梨々香の行方が分からなくなっていることも。
義則が海外に隠居してることも。

でも、それでいい。そうじゃなければいけないかったのだ。



(葵を面倒なことに巻きこんで、汚れて欲しくなかった。
それに……僕の非情な姿をさらして、君に嫌われることが一番恐ろしかったからね)




葵の濡れた髪を掻き上げ、須和は唇を奪った。

繋がった部分から熱帯び、葵が奥底に隠していた欲望を呼び起こす。

「……柾さん、もう絶対に離れていかないでくださいね。ずっと一緒ですから」

「うん、僕の隣にいて」


葵は須和の首に腕を回し、何度も須和の唇を求める。
そんな彼女の姿に、須和は心から喜びを覚えたのだったーー。








END
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