独占欲に目覚めた御曹司は年下彼女に溢れる執愛を注ぎ込む
目の前に現れた“須和さん”に、葵の頭は真っ白になった。

(こんなカッコイイ人、見たことない)

百八十センチ以上はある長身で、上等なスーツにベルベッドの目を惹くネクタイ。
その変のサラリーマンとはわけが違うのは歴然……。
スタイルだけではない。切れ長の瞳が目を惹く、美しい顔立ちだ。

「あ、もしかして君が、利光さんのお嬢さんかな」

「えっ、は、はい……! そうですけど……あの……」

(本当に須和さん、なんだよね?)

よほど葵が不安げな表情を浮かべていたのか、須和はクスッと微笑んだ。

「初めましてだよね。僕が本物の須和です。いつも秘書に買って来てもらってるから、ビックリしたかな」

葵は唖然とした、父のようなおじさんを想像していたのに、須和がずっと若かったからだ。
明らかに父よりも、自分の方が年が近い。

「あ、はい……そうですよね、初めまして。いつもご贔屓ありがとうございます」

顔が火照り始めて、葵はぺこりと頭を下げた。
男性に微笑みかけられて、こんなに照れたことは初めてでどうしたらいいか分からない。
視線を合わせるのも、ためらわれた。

「あはは、そんなにかしこまらなくて大丈夫だよ。僕は本当にここの和菓子が好きでね。
小さい頃からの大ファンなんだ」

「そうなんですか……?」

(小さい頃?)

とその時、下駄の足音が近づいてくる。

(まさき)! 久しぶりじゃないか、元気にやっとったか!?」

利光がニッコリと笑顔を浮かべながら須和に駆け寄った。
するとさっきまで鋭さを感じていた須和の切れ長の瞳が、優しく弧を描く。

「おじさんお久しぶりです。さっき出張から戻ってきたところで、時間が合ったので寄っちゃいましたよ。今、お嬢さんにご挨拶をしていたところです」



< 5 / 209 >

この作品をシェア

pagetop