エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
『頭痛いの?』
『なんだか朝からズキズキと痛むのよね。どうしちゃったのかしら』
珍しいと思った。祖母が自分の痛みを口にするのは。
高熱が出たときも、料理中に火傷をしてしまったときも、階段を踏み外して足を捻挫してしまったときも。祖母は私に心配を掛けないよう『痛い』『辛い』とは決して口にすることなく、我慢して普段通りに生活をしてしまうような人だったから。
だからあのときは本当に頭が痛くてどうしようもなかったのだと思う。それなのに、どうして気付いてあげられなかったんだろう。
病院に行ってみれば? もしも私がその一言を言えていたなら、祖母の命は助かったかもしれないのに……。
『きっと疲れているんだよ。それじゃ、私は遅刻しちゃうからもう行くね』
『はいよ。いってらっしゃい、千菜ちゃん』
痛む頭を手でおさえながら、祖母はいつもの笑顔で私を学校へ送り出してくれた。でも、学校から帰った私をいつもの笑顔では迎えてはくれなかった――
葬儀が終わって一週間が経っても、私は祖母を突然失った悲しみから、なかなか抜け出せずにいた。
高校にはなんとか休まずに通っていたけれど、家に帰ると毎日のように部屋で泣いていた。