エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 もともと子供の頃からクールで寡黙で、あまり人に興味がないのかな?とは思っていたけど、そこまで心が冷たい人だとは思わなかった。ほんの少しだけど彼の優しいところも私は知っていたから。

 でもあの瞬間から、私は貴利くんが大嫌いになった。

 きっと今頃は、患者やその家族に寄り添えない最低な医者になっているはずだ。


『むかしがどうかしたか?』


 途中で言葉を止めた私を心配に思ったのか玉蔵が尋ねてくる。ううん、なんでもないと私は首を横に振った。

 それから、結婚したくないとどんなに強く訴えてもしつこい玉蔵には聞き入れてもらえなくて、仕方なく私は貴利くんと六年振りの再会を果たすことになる。

 もしかしたら彼も私と同じように父親たちが勝手に決めてしまった結婚に乗り気ではないのかもしれない。貴利くんの性格を考えたら他人に自分の将来を決められるなんて絶対に嫌なはずだ。

 本人同士が納得していなければ、さすがにこの結婚話はなくなるだろう。そう期待していたのに……。


‟それでも俺は千菜と結婚をする。それはもう決まったことだ”


みなとみらいのホテルのラウンジで貴利くんは私にそう告げた。

どうやら彼は私とは違い、この結婚を受け入れる気でいるらしい。

軽く目眩がした瞬間だった。



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