エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 私が貴利くんのマンションに行くのは初めてなので、家まで迎えに来ると貴利くんは言ってくれたけど断った。

 住所さえ教えてもらえればスマートフォンの地図アプリを使って辿り着けると思ったし、港町総合病院の近くらしいのでだいたいの位置はわかる。

 そんな風に貴利くんがなるべく雨に濡れないように気遣ってあげたのに、まさかマンションの前で私の到着を待ち続けていたとは。

 屋根がある場所にいたから雨にはそれほど濡れていないようだけど、寒さで風邪を引いたらどうするんだ。


「外は寒い。早く部屋に行こう」


 貴利くんは私の手から傘を奪うと、反対の手で私の手をぎゅっと握った。その大きな手が、外の寒さのせいですっかり冷えてしまっている。

 温めてあげたいと思ったけど、雨の中を歩いてきた私の手もきっと同じくらい冷たいはずだ。

 早く部屋に入ってふたりで温まろう。

 貴利くんのマンションは五階建ての低層マンションの三階。まだ新築らしくとてもきれいだ。


「おじゃましまーす」

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