エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 しっかりと朝食を食べてきたはずなのに私のお腹はすでに空腹を訴えている。

 耐えられそうにないので何か軽く食べられるものでも頼もうかとメニュー表を広げてみるものの、思わずため息がこぼれてしまった。わかってはいたけど、お値段が優しくない。

 諦めてメニュー表を戻すと、腕時計に視線を落とした。


「――すまん。待たせた」


 すると、頭上から男性の低い声が聞こえて顔を上げる。


「急な呼び出しが入って遅れてしまった」


 ようやく現れた待ち人は、テーブルを挟んだ向かいのソファに腰を下ろすと、正面から私を見つめる。


「久しぶりだな、千菜」


 身長百八十センチは優に超える長身に、がっしりとした体格。黒髪の短髪。

 きりっとした目元と固く結んだ口元からは相変わらず表情が読めないし、感情のない声で私の名前を呼ぶのも六年前と少しも変わらない。

 それに、久しぶりの再会だというのに待ち合わせの時間に三十分以上も遅刻してくるってどうなの。仕事なら仕方がないから文句は言えないけど腹は立つ。

 つまり、私はこの男が大嫌い。

 そんな心の中の敵意が表情に出てしまった私は自然とふくれっ面になってしまう。

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